「それって逆差別ですよね」……反論にはパターンがある(写真=PIXTA)
「それって逆差別ですよね」……反論にはパターンがある(写真=PIXTA)

 あなたが、自分が多様性のあるチームを率いるマネジャーだと想像してほしい。

 ある日、職場で歓迎されていないと感じている肌が黒い従業員がいると聞き、あなたは困惑する。2人の肌が白い社員が人種差別的な衣装を着て参加したパーティーの写真をソーシャルメディアに投稿し、それについて他の同僚と冗談を言い合っていたという報告を受けたのである。あなたは懐深く、かつ迅速なサポートをするリーダーでありたいと考え、不適切な行為をした2人の従業員を個別に自室に呼ぶことにした。

 1人目の従業員(マイケルと呼ぶことにする)は、自身の肌が白いがゆえに肌が黒い従業員から不当に狙われた、つまりこれは「逆人種差別」の典型的な事例であると訴え、自己防御の対応を見せた。

 2人目の従業員(ジョン)もまた、別の方法で自分を被害者に見立てようとしている。彼は「言論の自由が脅かされている」と主張している。職場で言っていいこと・悪いことをコントロールすることは彼の基本的な権利を脅かすと言うのだ。

 あなたはこれらの議論をどう思うだろうか。両者、あるいはどちらか1人を信じる気になるだろうか。あなたなら、チームでこの状況にどう対処するだろうか。

批判をそらそうとする優位集団

 権力や資源に恵まれた集団(社会科学者は優位集団と呼ぶ)のメンバーが、権力や資源に恵まれない集団(劣位集団)に対する差別を非難されると自分たちを差別の被害者として描き、批判をそらそうとすることがある。

 これを競争的被害者意識(competitive victimhood)と呼ぶ。さらに一歩踏み込み、言論の自由や信仰の自由などに話題を変えて、新たな次元の被害者意識を生じさせる人もいる。これらを脱線的被害者意識(digressive victimhood)と呼んでいる。

 競争的被害者意識は、優位集団が美徳であるかのように見せ、それに対する批判を阻止することを目的としている。

 3081人を対象とした最近の研究では、上記の主張のようなものにどう反応するかを調査した。その結果、(ジョンのような)脱線的被害者意識の主張に対しての方が競争的被害者意識の主張に比べ一貫して好意的な反応を示すことがわかった。

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