不確かな情報であっても、その情報が何度も繰り返し伝えられることにより、情報の信頼性は増大してしまう。その結果、ビジネスリーダーは不確かな情報に基づいて意思決定をしてしまうことがある。本稿では、それを防ぐための4つの戦略を紹介する。

繰り返し聞くうちに、だんだん信じてしまう……(写真:PIXTA)
繰り返し聞くうちに、だんだん信じてしまう……(写真:PIXTA)

 Zoom会議は、対面でのミーティングと同じくらい役に立つ。週4日勤務は従業員の生産性を高めている。オンライン会議に不満が少ないということは、顧客が満足しているということだ。これは、イノベーションが不確実性の中で発生した1つの例だ――。

 ビジネスリーダーたちは日々このような主張に向き合っている。しかし人々はなぜこのような主張が正しいと信じるのだろう。また、そのように正しいと信じてしまうことは、戦略的な意思決定にどのような影響を及ぼしているのだろう。

 私たちは、いつでもどこでも多くの情報を入手できる時代に生きている。積極的に探さずとも、 常に多様な意見やレビュー、ソーシャルメディアの投稿にさらされている。

 しかし、これらの情報が全て正確であるとは限らず、中にはまったく虚偽の情報もある。 さらに厄介なのは、不正確な情報や間違った情報であっても、それが繰り返されることにより、あたかも「真実であるかのような錯覚」が生じることだ。人々は、たとえ真実でなくても、繰り返されることで、その情報が真実であると信じてしまう。

 誤報やデマは今に始まったことではない。だがそのような虚偽の情報は、組織において間違いなく意思決定に支障を来してきた。昨今の経営者は、不確かで信頼性のない情報に、かつてない規模で直面している。

 この問題は、プラットフォーム上の虚偽情報が社会全体に及ぼす影響が大きいフェイスブック、グーグル、ツイッターなどのビッグテック企業にとって特に深刻だ。例えば、新型コロナウイルスの流行に関して最も視聴されたYouTube動画を調査したところ、69本中19本に事実と異なる情報が含まれており、誤報を含む動画の再生回数は6200万回を超えていた(1)。

 企業の意思決定において虚偽情報がまん延すれば、組織の広報活動やフェイクレビュー、従業員のでたらめ、今だけでなく今後の従業員間での風評被害など、様々な形で企業の活動が悪影響を受ける。

 また経営者は、偽造データ・事実・数字など重要な意思決定の根拠となるにはあまりにも欠陥のある情報の受け手になることがある。誤った情報が伝わることは、それがわざとであってもなくても、適切な意思決定を阻害してしまう。

 CEO(最高経営責任者)から現場の従業員に至るまで、誰もが常に、情報の真偽を判断するという問題に直面している。しかし、その判断は必ずしも容易ではない。私たちが情報を理解する際、驚くほど平凡な方法で強力につくられる偏見によって、この問題はより複雑になる。

 これは人間の知性の不具合である。すなわち、情報の実際の正しさには関係なく、初めて聞く情報よりも繰り返し聞いた情報の方が信ぴょう性の高いものと認識する傾向があるのだ。私たちはある主張の真偽を判断するとき、実際の内容だけではなく、新規の情報よりも繰り返された情報を信じやすいことからも影響を受けているのだ。

誤情報が真実味を帯びる理由

 1939年、フランクリン・D・ルーズベルト米大統領は、「繰り返しても、嘘が真実になることはない」という有名な名言を残している。しかし残念ながら、数十年にわたる研究の結果、誤報を繰り返すと、少なくともそれが真実であるかのような錯覚を起こすことが分かってきた。心理学者はこの現象を「真実性の錯覚効果」と呼んでいる(2)。

 何度も耳にする情報は、私たちの判断に影響を与える「粘着性」を獲得し、その効果は一時的でも浅いものでもない。これは実に頑健であり、政治的な演説から製品の宣伝に至るまで、様々な領域でその威力が繰り返し確認されてきた。

 この真実性の錯覚の奇異な特徴として、元の情報がまだ記憶に新しいときだけではなく、その情報に触れてから数カ月たってからでも生じることが明らかになっている。さらに、人はたとえその情報に以前出合った事実を思い出せない場合でも、繰り返された情報の方をより正しいと判断してしまうのだ。

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