働き方の再構築が必要だ(写真=PIXTA)
働き方の再構築が必要だ(写真=PIXTA)

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、リモートワークなどの新たな働き方が注目され、様々な組織が自らのアイデンティティーの一部としての新たな働き方を探求している。英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授による最新の知見を紹介する。

 新型コロナウイルスがまん延して以来、私たちは職場のスキルや職場の常識、職場の習慣のあり方を拡張してきた。しかし、もはや新たな働き方を見つける興奮は風化し、深い恐怖が頭をもたげはじめている。

 ある大手食品会社の幹部は「工場の従業員が以前通りのシフトで働いているのに、オフィスの従業員が週3日在宅勤務の実験をしているのは公平なのだろうか」と筆者(リンダ・グラットン教授)に問いかけた。

 在宅勤務と出社を組み合わせたハイブリッドワークという働き方は従業員の生産性、とりわけ協調性や創造性を低下させるのではないかという懸念が高まっている。ある経営者は「従来のオフィスのような仕切りのない空間は、集中を妨げることもあったが、部署を超えて人々の間で交流を生んでいたのも事実だ」と語る。

 経営者たちは「大退職時代」によって従業員の離職率に敏感にならざるを得ない。どのような施策が人材を引きつけ、維持できるかが不透明な状況で、懸念は高まるばかりだ。しかも、経営者たちは競合他社がどのような施策に取り組みそうかに関しても大きな不安を感じている。

 このような恐怖心は負の連鎖をもたらす。失敗を恐れるあまり、従業員の一体感や帰属意識、アイデンティティーに関する問題につまずく経営者もいる。強い気概を持ち、実験を恐れずに進むのではなく、古くからの慣れ親しんだ考えに逆戻りしてしまい、従業員が求めているものへの共感を失ってしまう。人は失敗を恐れるとき、既知の世界に引きこもるようになるのだ。

 しかし、このような不安に立ち向かうことに成功しているリーダーもいる。筆者は新型コロナウイルスの感染が拡大して以来、30社以上の企業の経営陣と密接に連携してきた。不確実性に立ち向かうには、これらの課題を単にゼロかイチかの判断(例えばオフィスか自宅、フルタイムかパートタイムなど)として捉えるのではなく、再設計と変化のプロセスとして捉える必要がある。

 そうすれば従業員へ正しい価値を届けるという複雑性を正しく認識し、従業員が公正で包括的な変化を受け入れることができるような文化を創り出すことができる。

「リデザイン(再構築)」による前進への道筋

 リーダーが不安や恐怖を感じているとき、トップダウンの決断をするのは自然なことだ。しかしこれは、リーダーがどのような措置が的確であるかを正しく把握している状況でのみ有効であり、現時点でそのようなリーダーはほとんど存在しないだろう。一方、個々のマネジャーに判断を委ねると、どうしても従業員の間に不信感やバイアスが生じる。