仕事の環境が変わりつつある今、マネジャーは今までの階層的な権力構造のみに頼ることはできない。「関わる力」がかぎとなる。

オンラインで発揮すべき「関わる力」(写真=PIXTA)
オンラインで発揮すべき「関わる力」(写真=PIXTA)

 伝統的に、ヒエラルキー(階層構造)は組織内の異なる役割に組み込まれた権力構造を明確にするのに役立ってきた。対面環境ではオフィス内の位置、机や椅子の質、名札、バッジの着用など、地位やヒエラルキーを示す様々な視覚的な情報が存在する。

 しかしバーチャルな環境では、そのような視覚的な情報はない。マネジャーは、技術を介した環境であっても従業員に影響を与え、管理するために、新たな権力の源に頼らなければならない。

 ズームやマイクロソフト・チームスのようなビデオベースのアプリケーションによるバーチャルワークの活用についての研究は進んでいるが、スラック、ハドル、Ryver、Flockなどのテキストベースのプラットフォームはあまり注目されていない。これらのコラボレーションプラットフォームの市場規模は2025年までに507億ドルに達すると予測されている。マネジャーと従業員の間で、このようなプラットフォーム上でのやりとりが増えていくだろう。

 我々は、バーチャルな環境におけるチームの関係の本質を、概念にすべく研究した。マネジャーと従業員の関係がどのように維持されているのかを実証的に明らかにするために、米フォーチュン誌の「グローバル500」に含まれる多国籍企業の64人のマネジャーにインタビューし、約1200人によるGoogle+ for Businessプラットフォーム上のやりとりを分析した。

 研究の結果、バーチャル環境における管理職と従業員の関係の維持には、「関わりニーズ」が重要な役割を担っていることが判明した。関わりニーズとは、マネジャーと従業員の間の社会的な交流の原動力のことであり、情報、タスクごとの資源、承認、リーダーシップなど、多くの要素が含まれる。新たな仕事の世界で成功するためには、マネジャーはヒエラルキー上の権力だけをリーダーシップの根拠にするのではなく、ハイブリッドワークにおける「関わる力」の重要性を認識する必要がある。

「関わる力」とは?

 関わる力とは、上下関係がなくても他者に対して影響を与える個人の能力に由来する。例えば、営業担当の若手幹部が新しいプロジェクトの運営グループを設立するために、同僚の時間やリソースが必要になったとする。この時に、様々な部署の先輩にボランティアとして参加するように説得するといった形で関係性をつくっていく「関わる力」が表れるかもしれない。

 同様にチーム内でリーダーではない人が、他のチームメンバーをうまく動かしKPI(重要業績評価指標)を達成するように誘導することができるかもしれない。また、ネガティブな行動を抑制したり刺激したりするために、関わる力を行使することもできる可能性がある。