合併を通じて大躍進を遂げた米アラスカ航空(写真=Shutterstock)
合併を通じて大躍進を遂げた米アラスカ航空(写真=Shutterstock)

 私たちの多くは、仕事やレジャーのために日常的に旅をしている。一方で、航空券の予約、手荷物のチェック、マイレージの獲得や交換など、必要な作業についてはあまり意識しない。現代の空の旅は、時間をかけて検討したり評価したりする人が少ないほど必要な作業が意識されないという、とてつもない偉業を成し遂げている。

 2016年、米アラスカ航空が米ヴァージン・アメリカを買収し、当時の米国4大航空会社に強力なライバルが誕生した。2つの航空会社を1つの会社に統合するためには、従業員に主体性を与え、意思決定できるようにするという、抜本的なシフトが必要だった。このシフトはアラスカ航空の文化を変革し、ボトルネックを解消して合併を加速させた。

 この経験は、同社がパンデミック(世界的大流行)のさなか、加盟航空会社14社の国際線フリークエント・フライヤー・サービスであるワンワールド・アライアンスに加盟した際にも大きく生きた。ワンワールド・アライアンスに加盟するために、アラスカ航空は運賃クラス、マイレージ・プログラム、ロイヤルティー・プログラムを、顧客に気づかれることなく作り直す必要があった。

 アラスカ航空のマーチャンダイジング&イノベーション担当上級副社長チャル・ジェイン(Charu Jain)氏と、ITサービス担当副社長ヴィクラム・バスカラン(Vikram Baskaran)氏に、合併の経緯、および合併に伴う社員と顧客との摩擦をどのように減らしたのかなどを聞いた。

(聞き手はMITスローンマネジメントレビュー)

アラスカ航空とヴァージン・アメリカの合併のような統合には、大きな技術革新が必要です。統合の間にも顧客にいつも通りのサービスを提供し続けることは非常に困難だったと思うのですが、どのように取り組まれたのでしょうか。

事業目的が異なるシステムを、どう統合するか

ヴィクラム・バスカラン:ヴァージン・アメリカ を外部から見たとき、同社はスタートアップであったにもかかわらず、素晴らしい顧客体験を提供していました。対して、アラスカ航空は75年の歴史を持つ企業です。この2社は、テクノロジースタック(事業遂行に必要である技術的なツールの組み合わせ)が全く異なりました。一般客向けに特化したヴァージンと、ビジネスに特化したアラスカという2つのエコシステムを比較し、これらのシステムをどのように発展させるかを、とても興味深く考えました。また、私もチャルもとコンチネンタル航空の合併に携わったことがあり、その経験も生きました。

チャル・ジェイン:ちょうど合併が発表された頃に入社したのですが、今回は確か私にとって3度目の航空会社合併だったので、自分が何をすべきなのか分かっていました。

 合併において、成功か失敗かの分かれ目は2つあると思います。一つは技術。もう一つは文化、つまり人の部分です。私たちはテクノロジー畑の人間です。どちらか一方のシステムを選んで進めるのか、それとも第3の答えに移行するのか、どう進めるかを判断するための指針があります。場合によっては、両社がある領域で新しいシステムや答えを検討していたかもしれません。技術面で最も重要なのは、システムを統合するための最速の方法は何かということに焦点を当てることです。