
現代のリーダーは従業員からのさらに柔軟な労働環境に対する要求と、リモートワークがもたらすイノベーションや企業文化への悪影響の懸念をてんびんにかけなければいけない。このテーマに関する最新の研究を紹介する。
イノベーションを促進し、企業文化を発展させるのは、従業員たちが同じ空間でデスクを隣り合わせにして座り、同じポットからコーヒーをいれていた3年前ですら困難であった。ハイブリッドワークが定着し、多くの従業員が自宅と会社の両方で時間を過ごすようになった今、その課題はより困難となった。
最新の調査によると、企業のマネジャーはハイブリッドワーク(出社とリモートワークを組み合わせた仕事の仕方)がイノベーションと(組織)文化に与える悪影響を懸念している。そのような影響の客観的な証拠はまだ多くないが、潜在的な脅威が存在するのは間違いないだろう。
私たちはハイブリッドワークを、勤務を会社と他の場所(通常は自宅)に分けて柔軟にバランスを取ることと定義する。私たちは、コロナ禍にハイブリッドワークを導入した業界をリードするグローバル企業を2年間にわたって調査し、その耐久性を明らかにした。私たちの調査対象のマネジャーは全員が、「自分の会社は長期的なハイブリッド戦略を立てるつもりである」もしくは「すでにそれを実行している」と答えている。
企業がハイブリッドワークを支持するのは、主に従業員側のニーズによるものだ。従業員は、コロナ禍に自宅で仕事をしたときの自らのパフォーマンスの高さを指摘し、働く場所と時間の選択肢や柔軟性を求めている。リーダーたちは、優秀な人材を引きつけ、維持し、モチベーションを高めるためには、柔軟な勤務形態を提供しなければならないことを理解している。
このような柔軟な勤務形態は、企業にとって他のメリットももたらした。例えば、私たちが調査した企業の90%は、コロナ禍によるリモートワークを導入した最初の年において、容易にアクセスできるオンライン会議やコラボレーション技術によって生産性が微増した。さらに、マネジャーとチームメンバー間のコミュニケーションの改善、短期目標の早期達成、プレゼンティーイズム(病気にもかかわらず職場に出勤すること)の減少などのメリットも報告された。
したがって、問題はハイブリッドワークを導入するかどうかではなく、どのように導入するのかだ。マネジャーは、長期的な競争優位の地盤となるイノベーションと企業文化の構築を犠牲にせずに、柔軟性向上という従業員のニーズに応えなければならない。このような雇用主と従業員の緊張関係は、何日間オフィスへ出社するのが最適であるかの議論に集約されることが多いが、一般的に一律の方針は有効であるとは言えない(*1)。
タスクと仕事環境のマッチング
より繊細なアプローチは、ハイブリッドワークのタスクをリモートですべきものとそうでないものの2種類に区別することだ。このようなモデルは社会的・創造的なタスクと物理的なオフィス環境でベストパフォーマンスを発揮するタスクを明確に結びつける。そして、従業員同士の密接な関係を築くために、直接会う何気ない交流を推奨する。それなら、たとえタスクの一部がリモートだとしても、この連携はイノベーションと企業文化に焦点を当てた仕事のパフォーマンスを向上させるのだ。
私たちが調査した組織の半数以上は、従業員が遂行するタスクの性質に基づいてハイブリッドワークを許可するかどうかを決定していた。タスクは次の4つのカテゴリーに分類できる(*2)。
個々の業務運営上のタスク。データの入力、請求の処理などのタスクは他人と関わりなく行うことができる。リモートワークにおいては、その監督だけが困難となる。
集中型のクリエイティブなタスク。コードを書いたり、パンフレットをデザインしたりなどのタスクは、チームワークをほとんど必要とせずテクノロジーによって容易にサポートされるので、リモートワークへの移行が最も簡単である。
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