生活や医療など、あらゆる分野の進歩に欠かせないイノベーション(技術革新)。しかし、人種やジェンダーといった私たちに内在する偏見はしばしば、画期的なアイデアに正当な評価を与える邪魔をする。理系分野で少数派の女性やアフリカ系米国人は、こうした障壁と常に戦ってきた。だが、既存のシステムを新鮮な目で見つめる「よそ者」の視点こそが、画期的なイノベーションを生み出すカギなのだ。

 イノベーションが人類の進歩の原動力であることは広く知られている。それは経済的成長だけでなく、科学や医療から、格差是正、持続可能性(サステナビリティー)といった様々な領域にまで、重要な改善をもたらすエンジンだ。

 良いアイデアは誰でも思いつくことができるため、米国の特許取得者の分布は同国の職場の人口構成に近いと思われがちだ。だが、それは間違いだ。イノベーションのリーダーシップにおいて、女性とアフリカ系米国人の2つのグループが大きく後れを取っていることを複数の研究が示している。

 この不均衡の原因はしばしば、科学や技術、工学、数学といったSTEM(理系領域の総称)と呼ばれる分野において、この2つのグループに属する人が少数であることだといわれる。しかもデータを見ると、STEMにかかわる女性やアフリカ系米国人は白人男性に比べ、特許を申請する頻度が極めて低いことが分かる。

 この2年間、私たちが何かを学んだとすれば、それは感染症のパンデミック(世界的大流行)、気候変動、不安定な電力供給網、構造的な人種差別、そして「ビッグ・テック」と呼ばれる巨大IT(情報技術)企業のプラットフォームを介した誤情報やヘイトの拡散といった差し迫った問題を解決するため、革新的なソリューションが今すぐに求められているということだ。

 こうした問題の解決には、我々の中でも最も革新的な人材の活躍が欠かせない。だが、どんな領域でも「過小評価グループ」に属する人々が画期的なアイデアを持っていても、それを実現するのは難しい。興味深いのは、こうしたよそ者グループに属する人のほうが、斬新な解決法を開発するために必要な「複数の要素を組み合わせる」思考を簡単だと感じることが多いということだ。

先入観がない人ほど斬新なアイデア

 研究によると、よそ者は主流派に属する人々に比べ先入観をあまり持たないため、一見異質な考えを結びつけやすいのだという。例えばある研究では、大工と屋根職人、インラインスケーターの3グループを集め、大工用の防護マスク、屋根職人用の安全ベルト、スケーターの膝パッドの改良方法を募ったところ、全グループにおいて、自分たちに無関係な分野に関する課題ほど斬新なアイデアを出せたのだという。

 理系クラウドソーシングサイト「InnoCentive(イノセンティブ)」に投稿された166の問題解決コンテストに関する研究では、受賞したアイデアは該当分野とは別の領域を専門とする「予想外の貢献者」が生みの親であることが多かった。別のクラウドソーシングの研究でも、複雑で難解な研究開発(R&D)の課題に対して突破口となる解決策を発案するのは、業界人よりも業界外の人材であることが多かった。

 いずれの研究も、主流から取り残されたよそ者であることが、イノベーションの創出において優位に働くことを証明している。

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