「汝(なんじ)自身を知れ」とは古代ギリシャの有名な格言だが、多くの成功者が共通して持つ資質「グリット(grit=やり抜く力、粘り強さ)」の醸成も、自分を知ることから始まる。自分自身について深く考える自己評価式のアンケートに答えることが、若者の人格形成を後押しする「気づき」を促進する。

 私はグリットを15年間(※注)研究してきたが、ある人々が他の人々に比べてはるかに長く、1つのことに取り組めるという考え方は真新しいものではない。

 1世紀前、米スタンフォード大学の心理学者だったキャサリン・コックスは301人の優れた業績を残した人たちの人生を研究した。その結果、世界を変えるような芸術家、科学者、リーダーらには自らの目標を守り抜き、はるか遠くの野望に向かって不屈の粘り強さで努力し続ける強い傾向があると結論づけた。

 私はコックスの仕事を踏まえ、長期的ゴールに向かう忍耐力や情熱、つまりグリットが、21世紀においても目標の達成につながるかどうかを調べることにした。私はこの種の性格が年齢、ジェンダー、教育などとどう関係するのか興味を持った。私はグリットの動機づけ、行動、認知の基盤を明らかにしたいと思った。

相対性理論で知られる物理学者アルベルト・アインシュタインは「私は天才ではありません。ただ、人より長く1つの事柄と付き合っていただけです」と語ったとされる(写真:PictureLux/アフロ)
相対性理論で知られる物理学者アルベルト・アインシュタインは「私は天才ではありません。ただ、人より長く1つの事柄と付き合っていただけです」と語ったとされる(写真:PictureLux/アフロ)

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