サイケデリック薬、と聞けばかなり危険で悪いイメージが伴う。だがほとんどの薬物は、生理学的に安全である。科学の世界では、多くの人が「サイケデリック・ルネサンス」と呼ぶ精神医学やメンタルヘルスの新しい潮流を受け入れている。

精神薬や精神療法の活用は社会に認められつつあり、メンタルヘルスやウェルビーイングが重要とされる現代において革新的な解決策となる可能性がある。
サイケデリック(精神薬)。この言葉を口にすると、多様な意見の起点となり、偏見や誤解、誤認が巻き起こる。根拠の乏しい仮定やハリウッド映画などの描写。精神薬によってもたらされる特殊な精神状態、いわゆる「トリップ」した状態がもたらす良い効果や悪い効果に関する社会的なイメージ。あるいは「神話」に基づくものばかりだ。
こうした先入観はさておき、私たちは多くの人がサイケデリック・ルネサンスと呼ぶ、精神医学やメンタルヘルス、健康増進のために精神薬を使用することについて考える、新しい科学の波に入りつつある。
では、この「サイケデリック・ルネサンス」とはどのようなものか?
科学とビジネスにサイケデリック到来
まず、入門的な知識から始める。サイケデリックは、何千年もの間、世界中の古代社会で使用されてきた。しかし、この分野で厳密な科学的研究が始まったのは19世紀から20世紀にかけてである。脳内のいくつかの認知プロセスに影響を与えて意識の変容をもたらし、知覚や思考、感情に影響を与える精神活性物質のことである。
1950年代から60年代にかけて、精神衛生や病気におけるサイケデリックの利用について、爆発的な数の研究がある。しかし、カウンターカルチャー運動、娯楽目的の使用(および誤用)の急増、政治的不安により、このような薬物には汚名が着せられ、最終的には70年に精神薬はスケジュール1の規制薬物に分類されるに至った。これにより、臨床研究を継続することがほぼ不可能になった。
古典的なサイケデリックには、LSD(「アシッド」)、シロシビン(「マジックマッシュルーム」)、DMT(アヤワスカなどの植物に多く含まれる)、メスカリン(ペヨーテやサンペドロなどのサボテンに含まれる)、ケタミン、MDMA(エクスタシーとして知られているものの成分)など様々なクラスと種類がある。
それぞれ脳内で異なる作用が働き、精神や知覚、行動に影響を与えることができる。また、サイケデリックの効果は、服用量によって大きく異なる。高用量では、強烈な感情体験や幻覚を誘発し、それが数時間続くこともある。非常に低用量(マイクロドーズと呼ばれる)では、通常の機能に影響を与えない量を自己投与することができる。
Powered by リゾーム?