パンデミック(世界的大流行)により、世界中の企業でデジタル化が加速した。しかし、企業が焦ってデジタル化を進めることで陥りがちな問題も分かってきた。本稿では、ビジネスリーダーがデジタル化を進めるために必要な意思決定プロセスの在り方などを紹介する。

1816年、フランスの医師ルネ・ラエンネックは、ある問題に直面した。従来の手法では心臓病の女性を正しく診断することができなかったのだ。そこで、彼は数枚の紙を丸めて作った筒の端っこを患者の胸に、もう片方の端っこを彼の耳元に当てた。これが、聴診器の始まりである。
ラエンネックは、「医師が道具を介して患者を診断する」という自らの発想が、後の医療を大きく変えることになるとは、夢にも思っていなかった。やがて医療の世界では、従来の診断手法に代わり機械により診断するようになっていった。その結果、人間の直感や総合的な評価による診断の機会は、ますます減少していった。そして現代の医療技術は、患者ではなく、病気とその症状に焦点を当てるようになったというわけだ。
現在、無数の治療向け技術があり、それを扱う専門家がいて、さらには巨大な製薬メーカーが存在している。変革により医療が近代化したことで、医療業界に計り知れない利益がもたらされたのだ。一方、(個々の専門家の)診断できる範囲が狭くなり過ぎていることや、根本的な原因ではなく症状を診断する対症療法になっていること、そして高度な医療が高額になっていることが問題となっている。
これは、決して医療業界だけに限った話ではない。
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