オニツカタイガーとソニーに学んだフィル・ナイト

 スティーブ・ジョブズもフィル・ナイトも、創業の段階から、日本企業の影響を受けている。

 フィル・ナイトのスポーツシューズ・ビジネスの原点は、日本のオニツカタイガーのブランドに心引かれ、米国でタイガーブランドのランニングシューズの輸入販売を始めたことだ。

 ナイトがスポーツシューズ・ビジネスを始める原点は、彼がスタンフォード大学のMBA在籍時のリポートで「日本製のランニングシューズを売る」という起業プランを書いたことだ。

 またナイトとジョブズがともに影響を受けた企業がある。ソニーである。

「私たちにも手本とする会社がある。たとえばソニーがそうだ」
「問われると、私は幾度となく自分の会社をソニーのようにしたいと答えていた」(フィル・ナイト)

 ジョブズは、次のように語っている。

「トリニトロン、ウォークマンといったソニー製品にどれだけわくわくしたか」
「コンピュータ界のソニーになりたい」
「私たちは、ソニーを尊敬している。彼らには革新という確かな歴史があり、すばらしいデザインも創り出している」

 顧客にアップルブランドの世界観を体感してもらうアップル・ストアの原点は、ソニーのショールームである。

 ジョブズは、ソニーの成功に学び、とくにソニーの共同創業者、盛田昭夫との絆は強かった。

 1999年にサンフランシスコで行われた新しいiMac発売のイベントの冒頭では、その直前に亡くなった盛田を追悼している。盛田なき後、時代の転換点の中で不振に陥ったソニーを反面教師にもした。

 ちなみに、ジョブズのトレードマークでもある黒のタートルネックのセーターは、日本に出張したとき、ソニーの工場で働く人々が制服を着ていたことに影響を受けて、日本人デザイナー三宅一生に大量に発注したものだ(アイザックソン著『スティーブ・ジョブズⅡ』)。

「気に入った黒のハイネックを作ってくれとイッセイに頼んだら、100着とか作ってくれたんだ」(スティーブ・ジョブズ)

 世界ブランドとなったアップルもナイキも、日本との関係なくして生まれなかった。日本には、間違いなく世界ブランドを生み出すポテンシャルがあるということだろう。

 ブランドづくりにおいて、大切なことは足元にある。日本的な強みを生かすことができれば、日本の企業は、強い世界ブランドを生み出すことができるはずだ。



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