日本発“引き算”のブランドづくり
日本から輸出しているのは、トマトではない。欧州で売られるアメーラは、スペインでの現地生産である。輸出しているのは、「ブランド戦略」だ。
アメーラのブランド戦略の軸にあるのが、「引き算」の発想だ。イノベーション・アワードの最高金賞を受賞したドイツの国際展示会においても、“引き算”の発想を訴求した。展示会でのアメーラのスローガンは「Wordless(言葉はいらない)」、展示ブースのコンセプトは「Less is more(引き算で価値を生み出そう)」だ。
強いブランドが誕生するきっかけは何か
ブランドづくりを学ぶために、強いブランドが“今何をしているのか”を研究することは、あまり意味がないかもしれない。なぜなら、そのブランドは、“すでに”強いブランドだからだ。
知るべきは、そのブランドが“強くなるきっかけ”は何かである。
たとえば、
・アップルが今、何をしているのかではなく、アップルが強いブランドになるきっかけは何か
・スターバックスが今、何をしているのかではなく、スターバックスが強いブランドになるきっかけは何か
・ユニクロが今、何をしているのかではなく、ユニクロが強いブランドになるきっかけは何か
を知ることが、ブランドづくりを学ぶためには欠かせない。
共通点は「引き算」にある
強いブランドになるきっかけをみると、その多くに共通することがある。
それは “引き算”の発想だ。
一度アップルを追い出されたスティーブ・ジョブズが1997年にアップルに復帰すると同時に行ったのは、製品のラインナップの“引き算”だ。
マッキントッシュだけでも10種類あまりあったものを、「一般消費者」「プロ」「デスクトップ」「ポータブル」の4種類に絞り込んだ。プリンターもサーバーも引き算した。
「何をしないかを決めることは、何をするかを決めるのと同じぐらい重要だ」
「何かを捨てないと前に進めない」(スティーブ・ジョブズ)
スターバックスは、創業時の「コーヒー、ティー、スパイス」の3本柱から「ティーとスパイス」を引き算し、「コーヒー」に絞ったことがブランド化のきっかけだ。コーヒーに絞り込むことによって、イメージが明快になった。イメージが明快になれば、ブランド力は強くなる。
アマゾンが世界のブランドになる原点は「書籍」への集中だ。書籍を軸に、ユーザビリティ、在庫、配送などシステム拡充の投資を続け、圧倒的な競争力を作り上げた。
現在のロゴに書かれているように「AからZまで」オンラインで対応できる全ての商品に広げるようになったのは、ブランドが確立したあとだ。もしも、創業時から、幅広いジャンルを扱うネットショップだったとしたら、今のアマゾンはなかったはずだ。
日本発の企業も同様だ。
ユニクロがブランド力を高めたきっかけは、フリース一点に絞って展開したキャンペーンである。
「何か商品を絞って訴えないかぎり、お客様には来ていただけそうにない」(柳井正)
CoCo壱番屋(ココイチ)も同様である。スタートは、1974年開業の「喫茶バッカス」。ブランド化のきっかけは、喫茶店メニューを引き算し、カレーに集中したことである。
その後、アジア各国、アメリカなど世界にも進出し、世界最大のカレーレストランチェーンとしてギネスブックにも登録されている。今や、カレーの本場のインドにも出店している。カレーがおいしい喫茶店のままでは、世界ブランドにはならなかっただろう。
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