新型コロナウイルスがまん延した2年間でテレワークが定着し、職場から離れた地域に家を持ちたいという人が増えた。そんな分散の動きがある一方、首都圏のマンションへの需要が急増中。2022年の不動産市場はこれまで以上に動きが激しくなりそうだ。

戸建ての受注が堅調なオープンハウスの家。売上高が大幅に増加している
戸建ての受注が堅調なオープンハウスの家。売上高が大幅に増加している

 「コロナ禍が長期化したことで『教育環境』を重視して住宅を購入するお客様が増えている」。駅近の新築戸建て住宅を主力とするオープンハウス(東京・千代田)の営業本部営業推進部長、矢頭肇氏はこう話す。外出制限で多くの人が快適な住環境を求めて戸建て住宅を購入する動きは、これまでも伝えられてきた。その流れを細かくみると、ニーズが多様化していることが分かる。

 矢頭氏は「オンライン教育を導入した小中学校では地域によって教育の差が生じていることから、『教育レベルの高い自治体に戸建てを建てたい』という声が増えてきた」と解説する。職住近接を改める理由は、単にテレワークが可能になったからというだけではなくなっている。

人気エリアは浦和

 人気エリアの代表格はさいたま市浦和区。自治体にある公立校の教育水準が高いと評判の地域だ。特に高砂小学校や常磐小学校の学区は、子供の中学受験を目指す30代や40代が戸建て購入を希望する。千葉方面では市川市などが人気だ。

 「小中学校の学区」が不動産の売りとなる地域は空き地に限りがある。好立地の確保は激しい競争となるが、オープンハウスは埼玉県立浦和高等学校など進学実績のある有名校近くの土地を押さえ、「教育熱」を捉えようとしている。

 矢頭氏によると、顧客が新築戸建ての土地を探す際は、現在の居住地から半径5km以内の希望が過半数に上る。しかし、都心部の土地は高騰して入手困難だ。「それならば」と発想を切り替え「教育」や「趣味」などその地域ならではのメリットが享受できる立地を求める声が増えている。海に近い湘南エリアも「サーフィンができる」と人気だ。広めの敷地で部屋数を増やし、テレワーク空間をつくるニーズも依然根強い。

 こうした流れを受け、オープンハウスの業績が上昇。21年9月期通期の連結業績で、売上高は前期比40.7%増の8105億円、営業利益は62.7%増の1011億円となった。22年9月期の売上高は9200億円を予想している。住宅ローン金利の低さも追い風になり、賃貸住宅から郊外の戸建てに引っ越す需要は22年も続くとみられる。

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