・ワクチンや経口治療薬は海外勢の先行続く
・治療薬の充実で日常生活を徐々に取り戻せる
・抗アルツハイマー病薬、日本での承認は……

2021年の医薬品業界の話題は何といっても新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)向けのワクチンだった。米ファイザーと独ビオンテック、米モデルナ、英アストラゼネカと英オックスフォード大学の3陣営が開発したワクチンの使用が20年末までに米国や英国などで許可された。
21年に入ると、この3社のワクチンを中心とする接種が欧米などで進んだが、日本では厚生労働省が国内臨床試験を要求したことなどから承認までに時間がかかった。また、ワクチンの確保や接種体制の構築に手間取ったこともあり、年央までは接種率が上がらなかった。
そんな中で期待されたのが国産ワクチンの登場だった。だが、COVID‐19の発症を抑える効果を見るためには流行地域で大規模な臨床試験を行う必要がある。残念ながら21年末に至るまで、承認に至った国産ワクチンはない。ただし、アストラゼネカのワクチンはJCRファーマが原液を製造し、第一三共やKMバイオロジクスが製剤を担当している。国内で製造した〝準国産〟のワクチンといえる。
国産ワクチンの実現は
国内の医薬品開発状況をまとめた表の「ワクチン」欄に示したのは、日本企業が手掛け、承認申請の間近まで開発が進んだものだ。武田薬品工業のTAK‐019は米ノババックスから技術を導入し、山口県の光工場で製造する準国産品。田辺三菱製薬のMT‐2766は、連結子会社であるカナダのメディカゴのワクチンで、米国の工場で製造したものだ。国産とはいえないが、田辺三菱製薬が国内で臨床試験を行っており、22年3月までの申請を目指す。
国内で先頭を走っていたアンジェスのワクチンは、第2/3相の臨床試験で想定通りの効果が得られず、有効成分を増やした別の製剤に切り替えた。実用化時期を23年に先送りしている。
「治療薬」欄に示したのは、手軽に利用できる経口薬で、国内での開発が比較的進んでいるものだ。富士フイルム富山化学の「アビガン」は早い時点から有力視されていたが、まだ承認には至っていない。中外製薬のAT‐527も、親会社であるスイスのロシュが導入元の米アテア・ファーマシューティカルズに権利を返還すると11月に発表しており、見通しは明るくない。
海外では、米メルクのモルヌピラビルが英国で条件付き承認を取得。ファイザーの経口薬PF‐07321332も、抗HIV薬リトナビルとの併用で米国で緊急使用許可を申請した。日本でも、まずは外資系企業の輸入経口薬が承認されそうだ。
国内ではこの他に、たんぱく質製剤や細胞医薬などが後期臨床開発段階にある。患者数が激減した日本で臨床試験を行うのは容易ではないが、新型コロナの感染拡大と収束を繰り返しながら長期化するようであれば、闘う武器は少しずつそろっていくと期待したい。
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