・半導体不足の逆風が続き、再編の引き金にも
・EVシフトが加速、生き残りへ技術開発が急務
自動運転に欠かせないセンサー技術やソフトウエアなど、次世代自動車の領域に強みを持つスウェーデン企業のヴィオニア。同社をめぐる買収合戦が2021年夏に繰り広げられた。

最初に手を挙げたのはカナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナル。同社は自動車を変える4つの大きな潮流を指す「CASE(つながる、自動運転、シェアリング、電動化)」に対応すべく、M&A(合併・買収)を繰り返している。
それに対抗したのは半導体大手の米クアルコムだった。スマートフォン用チップで高いシェアを持つ有力企業だが、デジタルコックピットや自動運転機能などを備える次世代自動車の領域でも、事業拡大を虎視眈々(たんたん)と狙っている。
結果、勝利したのはクアルコムだった。21年10月、マグナの提示額を7億ドル上回る45億ドル(約5100億円)でヴィオニアを買収。先進運転支援システム(ADAS)や自動運転といった新たな領域を開拓し、スマホに続く事業の柱に育てる。
一昔前では想像できなかったマグナとクアルコムの買収合戦は、自動車産業の地殻変動を象徴する。ここ数年、従来型のサプライヤーではない異業種企業の参入が続く。自動車を次なる事業の柱と位置付け、IT(情報技術)企業や電機メーカーが相次いで市場に飛び込んでいる。
日本電産はモーターやギアを一体化した「eアクスル」と呼ばれるEV基幹装置の事業拡大を進める。中国に工場を設け、量産を開始。30年度に販売台数1000万台との目標を掲げ、大規模な投資を続ける。20年には、駆動系部品の競合である日産自動車系のサプライヤー、ジヤトコの買収に動き出したとの観測も浮上した。
SBI証券で企業調査部長を務める遠藤功治氏は「業種を問わず、自動車を軸に事業を拡大させたい企業は多い。22年も引き続き、自動車のサプライチェーン(供給網)への異業種参入は活発化する」とみる。
半導体不足の逆風続く
コロナ禍で減産を強いられた自動車業界にとって、21年は挽回の年になるはずだったが、世界的な半導体不足によって思い描いた回復はできなかった。半導体不足の解消時期についてはなお不透明で、「影響は23年まで及ぶ可能性もある」(ダイムラーのオーラ・ケレニウス最高経営責任者)との見方もある。
逆風がしばらく続くとなれば、サプライヤーの体力消耗は避けられない。市場回復を待たずして廃業や身売りに追い込まれる企業が出ることも予想される。
既にコロナ禍によって経営難に追い込まれた先行事例もある。カーエアコン部品大手のサンデンホールディングスは20年6月に事業再生ADRを申請した。コロナ禍の減産影響で売り上げが激減。稼働率が低迷したまま回復の時期が見通せず、私的整理の道を選んだ。
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