世界で爆発的に広がった新型コロナウイルスにより、2020~21年は経済活動が停滞した。感染の波の満ち引きに合わせて経済活動の制限と緩和が繰り返された結果、個人や企業は感染対処のノウハウを蓄積したが、以前と同じ明るさを取り戻すに至ってはいない。

 22年は2年間続いた長いトンネルを抜けることができるのだろうか。今回の特集では、様々な産業で点滅し始めている変化のサインをとらえ、再起動を始めた日本経済の22年を展望する。

 1回目は、コロナ禍で大打撃を受けた外食や小売り、観光分野の消費動向を取り上げる。ワクチン接種が進み、感染状況も落ち着いたこともあって、外出自粛の我慢を重ねた消費者が活発に動き出す様子が見られる。株高で資産を増やした富裕層もけん引役となって、22年は「リベンジ消費」の年になる公算が大きい。

■掲載予定
・外食・小売り・観光 我慢重ねた2年、リベンジ消費に火(今回)
・コロナは風邪のような存在「エンデミック」に?
・新築マンション、首都圏7000万円の現実味
・脱炭素の航空燃料 廃食油はどこにある
・自治体の“使えるデジタル”、鍵は高齢者
・自動車や電機襲うサプライチェーンパニック
・ラーメンにもんじゃ 珍自販機で変わる街の風景

※内容は予告なく変更する場合があります

 20年初頭から始まったコロナ禍の受け止めは業種によって異なっている。ネット分野の企業は巣ごもり消費を追い風に業績を伸ばし、中国需要などに支えられ比較的早く回復した業種もある。その中で、壊滅状態となったのがレストランや百貨店、ホテルなどだ。

 消費者にとって身近なこうした分野の企業の客足や業績がどこまで回復すると見るかによって、22年の日本経済のイメージは大きく異なってくる。

好調なのは「松」コース

コロナ禍で大打撃を受けたディナーレストランが息を吹き返している(写真:アフロ)
コロナ禍で大打撃を受けたディナーレストランが息を吹き返している(写真:アフロ)

 「レストランでは11月以降、特に若年層の客足が戻ってきている。松竹梅とあるコース料理の中で、価格の高い『松』の売れ行きがいい」

 飲食業などのムーンエレファントジャパン(大阪市)で、東京都や神奈川県などの一等地で宴会場のほか高級レストラン6店舗を運営する銀座クルーズ事業部の担当者は消費の変化を実感している。

 19年までは1万5000円~2万円の「竹」のコース料理が人気を博していたが、現状では最も高級な2~3万円の「松」のコース料理が好調とみている。客数がコロナ禍以前の水準にまで回復していることに加え、客単価が大幅にアップしているため、レストラン事業の売り上げは19年の同じ時期を上回る勢いだ。

 首都圏で21年9月末に緊急事態宣言が解除され、さらに10月下旬からは東京都でも酒類提供の制限が大幅に緩和されると需要はすぐに戻り始めた。30代を中心とする男女2人組の客が、記念日のお祝いやプロポーズの場としてコース料理を予約するケースが増えているという。

店舗移転・閉鎖からの復活

 銀座クルーズ事業部の20年度の売上高は、コロナ前まで全体の65%を占めていた宴会事業の売り上げが9割以上蒸発した。銀座や原宿にあった店舗は閉鎖・移転を余儀なくされ、コロナ禍の中で稼働していた店舗は密を避けるため席数を半減させるなど、苦境に陥った。

 今は息を吹き返すどころか、消費者は以前にも増して支出を惜しまない。同社は22年の動きについて「感染が再拡大するなど、業界を取り巻く環境がひどくならなければ春の卒業や歓送迎会のシーズンの需要が期待できる」(同事業部の山岸広美氏)という。

 特別な日には価格が高いものにも支出を惜しまない、というのは常のこと。ただし、コロナ禍で「ハレの日」を祝うことすらままならない事態を経験したことで、消費者はこれまで以上によそゆきに特別な意味を込めるようになっている。22年に向けて、ムーンエレファントジャパンのような「ハレ(祝い)のビジネス」といえる市場に一層、お金が向かいやすい状況になっている。

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