経営学などの「教科書」を活用する企業の強さに迫る本連載。第6回までは星野リゾートやYKK、スノーピーク、エレコムなどの企業の取り組みと複数の経営学者へのインタビューから、活用法を探ってきた。

 第1回「星野リゾート代表『100%教科書通り』の経営が会社を強くする
 第2回「優れた経営者は“自分の業界以外”でも鋭く分析できるのはなぜ?
 第3回「YKK『ファスナー世界トップ』への躍進を支えたコトラーの教え
 第4回「入山章栄氏『経営に正解はない。優れた経営者は考え続けている』
 第5回「スノーピーク、ファンが熱狂する経営の裏側に『教科書』があった
 第6回「エレコムを1000億円企業に成長させた『経営学オタク』

 だが、ビジネスパーソンにとって教科書になるのは経営学の本だけではない。第7回は医療品原料などを扱う東証1部上場のアステナホールディングスを取り上げる。同社の岩城慶太郎社長CEO(最高経営責任者)は東京から能登半島の先端に活動の拠点を移転。ハンナ・アーレント氏の著作なども読みビジネスのあり方を模索する。

アステナホールディングスの岩城慶太郎社長CEO(写真=山岸政仁)
アステナホールディングスの岩城慶太郎社長CEO(写真=山岸政仁)

 能登半島の先端に位置する石川県珠洲市。アステナホールディングス(HD)の岩城慶太郎社長CEOは、過疎化が進むこの地に2021年に本社機能の一部を移転。自らもこの地に活動拠点を移した。同社が開設した珠洲ESGオフィスには、岩城氏を含めて7人が所属。2年半後には30人ほどまで増やす予定だ。

 新たな拠点と定めた珠洲をはじめ、地方の多くは人口減少や高齢化によってさまざまな課題を抱える。岩城氏は一連の課題の解決が同社の新しいビジネスにつながると考えている。農業や医療サービスなど多様なプランがあり、この地で事業のプロトタイプをつくり、それを日本中に広げる構想の最前線に自ら立つ。

 能登半島に拠点を移すまで、岩城氏は10年ほどかけて事業ポートフォリオの組み替えを進めた。ホールディングス化も実施。既存事業をそれぞれ事業会社の社長に任せられる体制をつくってきた。岩城氏は「これからは、新しい事業ドメインを能登半島からつくりたい」と意気込む。

石川県珠洲市にあるアステナホールディングスの珠洲ESGオフィス(写真=山岸政仁)
石川県珠洲市にあるアステナホールディングスの珠洲ESGオフィス(写真=山岸政仁)

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