抽象化すれば、本質を理解しやすくなる

 経営学のもう1つの役割は、「抽象化」にあると思います。目の前のビジネスを具体的に考えていると、なかなか問題の本質にたどり着けないことがあります。それは「具体」にだけ関心が行ってしまうので、その本質的なメカニズムにたどり着けないからです。だから、異なる業界の人、互いの具体論だけで話すと、会話も通じなかったりしますよね。むしろ経営理論などを使って、抽象化することで本質を理解しやすくできる可能性があるのです。具体的な事象も抽象化して本質を見つめれば、どの業界にも当てはめて考えたりできる「汎用性」が出てきます。

 だから、同じ理論を橋渡しにして、色々な業界の人と議論もできるのです。また経営は人間が行いますから、経営理論とは人間や人間の織りなす組織の行動原理の理論といえます。そして人間の行動の本質は時代を経ても変わりませんから、経営理論には時間が経過しても古くならない「普遍性」もあるのです。主要な経営理論の中には1970年代、80年代に提示されたものもあるのですが、現代でもまったく通用するし、これからも通用するのです。

 コロナ禍も重なりますます先が見えにくくなっており、「会社にしがみついていても、その会社がつぶれるかもしれない」と気づく人は増えています。経営学に対する関心はこれまで以上に高まっており、私がいる早稲田大学ビジネススクールの入学希望者数もさらに増えています。私が書いた『世界標準の経営理論』は800ページを超える本にもかかわらず、出版してから2年ほどでこれまで11万部を超えるロングセーラーになっています。

<span class="fontBold">『世界標準の経営理論』</span><br /> 入山章栄著  (ダイヤモンド社)<br /> 世界の主要経営理論を体系化し、基本原理から紹介する
『世界標準の経営理論』
入山章栄著 (ダイヤモンド社)
世界の主要経営理論を体系化し、基本原理から紹介する
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 『世界標準の経営理論』は「ビジネスの真理に肉薄している可能性が高い」として生き残ってきた「標準理論」体系化しています。「その戦略で組織がこう動くのはなぜか」という「Why」の部分を説明しています。

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