経営学などの「教科書」を活用する企業の強さに迫る本連載。第1回「星野リゾート社長『100%教科書通り』の経営が会社を強くする」、第2回「優れた経営者は“自分の業界以外”でも鋭く分析できるのはなぜ?」に続き、今回はファスナー大手のYKKを取り上げる。

 ファスナーで世界的なトップブランドになったYKK。グローバル企業に成長する過程で、2代目社長で現相談役の吉田忠裕氏は、直接薫陶を受け、半世紀にわたって交流を続ける経営学者フィリップ・コトラー氏の教えを参考に、打つ手を模索してきたという。

YKKの吉田忠裕相談役(=写真:山岸政仁)
YKKの吉田忠裕相談役(=写真:山岸政仁)

 YKKの2代目社長を務め、現在は相談役の吉田忠裕氏が影響を受けたのが米国の経営学者、フィリップ・コトラー氏の経営理論だ。教科書を読むだけでなく、米ノースウエスタン大学経営大学院(ケロッグ校)留学中にコトラー氏の薫陶を受け、帰国後もずっと交流を続けてきた。

授業で直接コトラー氏から学ぶ

 吉田氏がケロッグ校に留学したのは1970年。注目を集め始めていたマーケティング理論の先駆者であるコトラー氏の講義を聞くのが同校を選んだ理由だった。初回の授業が終わると、当時日本からの受講者が珍しかったのか、コトラー氏が吉田氏に声をかけた。コトラー氏は「日本には米国以上にマーケティングの実践がある。なぜここでマーケティングの勉強をするのか」と尋ねた。吉田氏は少し意外な気がしたが、「実践はあるかもしれないが、学問として体系づけられているわけではない。どういう言葉でどう表現するのかを学びにきた」と答えたことを覚えている。

『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』(写真:山岸政仁)<br />フィリップ・コトラーら著 丸善出版<br />マーケティングについての概念ツールとフレームワークを網羅的に提示する
『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』(写真:山岸政仁)
フィリップ・コトラーら著 丸善出版
マーケティングについての概念ツールとフレームワークを網羅的に提示する

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