AIを活用した「ぴったりホテル診断」

 この考えを生かしたのが、星野リゾートの予約ページにある「ぴったりホテル診断」です。旅行の計画は一昔前まで「どこに行くのか」という場所から始まりました、しかし、最近特に若い世代は「誰と行くか」「どんな旅をしたいか」がまずあり、「それはどこなのか」を考えることが増えています。これに対応するため、ぴったりホテル診断ではAI(人工知能)を活用。顧客が5つの質問に答えると、星野リゾートの52施設から自分に合った施設を6つまで絞り込んで提案します。ITによって旅行業界は大きく変わり、顧客獲得の主戦場はオンライン上に移っています。重要な分野であり、それに合った教科書を探しています。

<span class="fontBold">『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』</span><br />シーナ・アイエンガー著 文藝春秋<br />選択というツールを効果的に使う方法など、20年以上の実験と研究で選択の力を証明
『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』
シーナ・アイエンガー著 文藝春秋
選択というツールを効果的に使う方法など、20年以上の実験と研究で選択の力を証明

 3冊目がブランディングについて。最近はデビッド・テイラー氏の『ブランド・ストレッチ 6つのステップで高めるブランド価値』を教科書にしています。運営する施設数が増えてきた中、星野リゾートでは培ってきたブランドを傷つけることなくそれを拡張することがテーマになっています。施設名はこれまで社名の「星野リゾート」を入れるマスターブランド戦略を採用してきましたが、同書の理論を生かし、最近は施設名から社名を外し、温泉旅館の「界」などサブブランドを中心にしたブランド戦略に切り替えています。

<span class="fontBold">『ブランド・ストレッチ 6つのステップで高めるブランド価値』</span><br />デビッド・テイラー著 英治出版<br />ブランドを拡張するときに配慮すべき視点を整理。6つのステップに分けて解説する。
『ブランド・ストレッチ 6つのステップで高めるブランド価値』
デビッド・テイラー著 英治出版
ブランドを拡張するときに配慮すべき視点を整理。6つのステップに分けて解説する。

教科書は事業の成長に合わせて変わってくるのでしょうか。

星野氏:例えばブランディングについては、これまでブランド価値を高めるために参考にしてきた『ブランド・エクイティ戦略 競争優位をつくりだす名前、シンボル、スローガン』、マスターブランド戦略のベースとなった『ブランド・ポートフォリオ戦略』といった教科書があります。『ブランド・ストレッチ』を教科書に加えたからといって、それまでの教科書に意味がなくなったわけではありません。いずれも教科書であることに変わりがなく、戦略として一貫しています。行動経済学のような新しい分野が出てきたからといって、ブランドに対する考え方を変えることはないし、それまでの教科書と逆の方向に向かうこともありません。むしろ、行動経済学はこれまでの戦略に新しいニュアンスを加えるものだと捉えています。

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