才覚で経営ができるのだろうか

「教科書は正しくても、実際の経営に当てはめるのが難しい」という声も耳にします。

星野氏:実践の方法は教科書に書いてあります。これまでの経験から、教科書と実際の経営に違いはない、と実感しています。「当てはめられない」のはよく読んでいないか、教科書でない本を読んでいるかのどちらかだと思います。

 「自社に当てはめられない」という場合、他に何を頼りにしているのでしょうか。教科書の使い方が分からないのに、なぜ実践で戦略を立てられるのかが私には分かりません。

 競合が「教科書と現実は違う」と思っている場合、正しさが証明されている教科書通りに実践する経営は差異化につながるはずです。では、どの会社も教科書通りの経営をする場合はどうでしょう。その場合も「経営者の才覚が問われる」とは思いません。私は「才覚で経営ができるのだろうか」とずっと思っています。世界中に研究者がいて新しい理論がどんどん生まれています。企業が置かれているポジションなどもそれぞれ違いますから、あくまでも教科書通りに進めることでミスを減らすことができます。

自社に合った教科書はどのように選んできたのでしょうか。また選んだ本はどう読んでいますか。

星野氏:私の場合、書店で探すことが多いと思います。インターネット経由でも購入しますが、自社の課題に沿っているかどうかを確認するのは、少し読んでみるのがやはりいいし、それには書店での立ち読みが合っています。少し読みながら、シンプルな理論であること、自社の課題に直接的に答えてくれるかどうかなどをポイントに選びます。今でも30分ほど時間があれば、星野リゾートの東京事務所に近い「八重洲ブックセンター」本店に出かけ、次の教科書になる本を探しています。

 教科書を通して知りたいのは、あくまでも研究者が多くの企業の成功事例から導き出した法則ですから、選ぶのは研究者の本だけです。科学的に証明されているからこそ価値があり、研究者が証明した成果の上にこそ、自社が求めている次のステップがあります。経営者の成功ストーリーは内容が面白くても1つの事例ですから、私には参考になりません。

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