ジャパネットたかたの創業者、髙田明氏は長崎県佐世保市の1店のカメラ店からスタート後、テレビやラジオの通販番組などに進出。一代で全国にビジネスを展開する会社をつくった。髙田氏は本を通じて経営者としてのあり方を考え続けてきた。「自分のモチベーションを上げる本をよく読んでいる」と話す。

ジャパネットたかた創業者の髙田明氏(写真=管 敏一)
ジャパネットたかた創業者の髙田明氏(写真=管 敏一)

 髙田氏の場合、多くの本を読むのでなく、「これは」と思った本を自分の経験と重ね合わせ精読することが多いという。「1回読んだだけでは残らない」ため繰り返し読むが、読むたび心に残った記述に線やマーカーを引くため、ぼろぼろになることもある。

 愛読書の1冊がイスラエルのエリヤフ・ゴールドラット氏の著書、『ザ・ゴール』だ。同書はゴールドラット氏の提唱する「制約理論(セオリーオブコンストレイント、TOC)」に基づき、課題を見つけ、正しい順序で改善するプロセスをストーリー形式で記し、世界で1000万部以上の大ベストセラーとなっている。髙田氏は通販事業に進出して10年ほどが経過した50歳を過ぎてから同書と出合った。20年以上過ぎたが、「今もこの本から学び続けている」と話す。

 特に共感するのが、「ボトルネック(制約、処理能力が、与えられている仕事量と同じか、それ以下のリソース)」についての考え方だ。同書では、赤字続きで3カ月後に工場閉鎖が迫る中、主人公が業務改善に社員とともに挑み、工場を再建するまでが書かれている。課題を解決するためにはボトルネックだけを見ればいいのではない。社内のさまざまな部門が関係しており、全体を見て最適化する必要がある。そしてその分、コミュニケーションしながら課題解決に取り組まなければならない様子が示されている。

髙田氏が愛読するエリヤフ・ゴールドラット氏の著書の1つが『ザ・ゴール』
髙田氏が愛読するエリヤフ・ゴールドラット氏の著書の1つが『ザ・ゴール』
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 「木を見て森を見ずではダメで、問題の本質を捉えなければ課題は解決しない。通販で言えば、ボトルネックの究明が足りていないものは売れない。同書に書かれていることは、私がそれまでしてきたこととぴたりと重なり合っていると感じた」と髙田氏は話す。

 ジャパネットたかたの社長時代、髙田氏は経営者としてさまざまな決断をするだけでなく、テレビショッピングに自ら出演してMC(司会)として最前線に立った。テレビショッピングの場合、紹介した商品があまり売れないこともあった。

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