経営の原理原則を確認するために、経営学者や経営者の言葉を参考にする経営者は少なくない。タクシー・ハイヤーの日本交通で会長を務める川鍋一朗氏は、ことあるごとに自らの「教科書」とする本を読み返しながら、経営の在り方を考えてきた。

 日本交通(東京・千代田)は創業90年を超えるタクシー・ハイヤー会社だ。連結ベースの売上高は同業で日本最大となっている。ハイヤー約1600台、タクシー約7000台を走らせており、1万人が働いている。

 会長を務める川鍋一朗氏は1970年生まれ。日本交通の創業家3代目として生まれた川鍋氏は小学校から大学まで慶応に通った。大学卒業後には、米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院に留学し、M B A(経営学修士号)を取得。外資系コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンを経て、父が社長を務める日本交通に入社した。34歳の若さでトップに就いた。

 就任してからはそれまでの華やかな経歴とはほど遠い泥臭い挑戦も繰り返しながら、事業の先頭に立ってきた。業界内外の期待や評価は高く、全国ハイヤー・タクシー連合会の会長も務めてきた。

日本交通会長の川鍋一朗氏(写真=栗原克己)
日本交通会長の川鍋一朗氏(写真=栗原克己)

 川鍋氏はこれまでの歩みを振り返りながら「ビジネススクールの学びはスキルとして教科書を学ぶことよりも、学生同士がお互いに切磋琢磨(せっさたくま)するところのほうが大きかったのではないか」と振り返る。むしろ役立つ知識は経営の現場に入ってから、本を通して学んだことが多いと感じている。「本は安く購入できる上、手元に置けばいつでも手に取って読むことができる」と経営者が本を読む意義を語る。

気になることがあると取り出す本

 経営者として、いろいろな本を読んできた川鍋氏が中でも愛読しているのが、米国の経営学者ピーター・ドラッカー氏の本だ。ドラッカー氏についてはこれまで多くの著書を読んでおり、今もときどき読み返している。

 「ドラッカー氏の本は、いずれも経営についての本質的なことが短い言葉で書いてある。このため、読むたびにハートを射抜かれるような気持ちになる」と川鍋氏は話す。気になる記述があると、そのたびにチェックしながら読んできた。その結果、川鍋氏が持っているドラッカー氏の本には、いずれも線がたくさん引かれている。「自分にとっては参考書のようなものだと思う」と川鍋氏は言う。

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