本来あるべき姿に近づいている

 これまで多くの人にとって、生活は仕事を中心に回っており、勤務先で働く時間が「主」、家庭で過ごす時間は「従」でした。しかしコロナ禍でステイホームといわれるようになり、この主従関係は逆転しました。

 都心部では、多くの人が苛烈な通勤ラッシュから解放される一方で「家族そろってどう一日中過ごせばいいのかわからない」「自宅では集中して仕事ができる環境がない」といった問題が生じました。

 そして「在宅ワークができる環境を整えたい」「家族の時間を充実させたい」といったニーズが高まった結果、ホームセンターがにぎわい、家具がよく売れ、食品スーパーも非常に好調でした。

 しかし改めて考えると、そもそも家を快適にして家族の時間を充実させるということは「コロナ禍と関係なく、もっとお金を使うべきだった部分」ではないかと思います。

 つまり、コロナ禍によって本来あるべき姿に近づいている面があるわけです。

都心から神奈川県逗子に完全移住した理由

 私自身も、このコロナ禍をきっかけに大きく働き方を変えました。

 先に触れたように、私はもともと東京と逗子の2拠点生活をしていたのですが、在宅ワーク中心になると東京に行く理由は少なくなっていきました。

 逗子は空気や水がきれいで、地元でとれる野菜や魚も美味しく、生活はとても豊かです。犬を飼い始めて一緒に散歩したり、仕事の合間に妻とランチを食べたりする生活をしているうちに、東京の会社で過ごす時間を中心にした生活と逗子の家で過ごす時間を中心にした生活のどちらがより人間的なのかは自ずと明らかになりました。

 豊かなプライベートを楽しみながら仕事をする生活になると、生産性も上がりました。その結果、私が運用する投資信託「ひふみ投信」の成績は好調で、「R&Iファンド大賞2021」の投資信託10年・国内株式コア部門で優秀ファンド賞を受賞することもできました。

 結局、私は東京の家を売却し、完全に逗子に移住するという決断をすることになったのです。

 私だけでなく、社員にも引っ越しをした人がたくさんいます。

 都心から郊外に移った人もいれば、駅前の賃貸マンションを引き払い、駅から少し距離がありバスを使う必要がある「バス物件」に引っ越して、今までより広く部屋数の多い物件に住み始めた人もいます。現在は、新卒入社の社員から取締役まで、兵庫県や北海道など全国各地に住みながら働いている人がいる状況です。

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