DXは決して一過性のブームではない

 私が、「真のDX」に「型」があると考えるようになったのは、数々の企業のDXに携わらせていただいた経験に基づいています。

 企業の規模、業種、ステージにかかわらず、DXの成功パターンには最大公約数があります。そして、失敗パターンにもまた共通のつまずきがあります。これは、DXに何度も本気でチャレンジされてきた経営者、事業家、実務家の皆さんは、感覚的にお分かりになると思います。

 ただし、成功の最大公約数、失敗の共通のつまずきは、あまり形式知として共有されていないのが実情です。一部で共有されている形式知も、「真のDX」の全体像から見ると一部のテーマに過ぎません。

 検索エンジンで「DX」と検索して表示されるのは、抽象度が高すぎる言説や、一部のDXテーマに対するサービスの営業ページばかりです。これでは、DXの全体像が見えず、テーマごとに役立つ形式知が得られないと思うのです。

 自社のDXが遅れていると感じていても、何からどう着手すればよいのか、うまくいっていないものをどうすれば立て直せるのか分からず、お困りの方が多いのではないでしょうか。

 結果として、ちょっとした“DXごっこ”や、コンサルティング会社やシステム会社への丸投げが横行し、日本企業のDXは遅々として進みません。

 本連載でチャレンジするのは、私や共に仕事をした同僚たちの実体験に基づく「真のDX」の「型」の共有です。経営者、事業家、実務家の皆様が、10年がかりで事業と会社を生まれ変わらせるためのヒントになればと思っています。

 DXは、決して一過性のブームではありません。世の中の呼称は変わったとしても、当面、その本質は変わらないでしょう。

DXで必要なのは継承し続ける仕組み

 「真のDX」は、生まれ変わることが目的なので、10年間、15年間という長い期間がかかります。その間に、必然として、経営者も変わり、担当者も変わり、外部パートナーも変わり続けます。世の常として、新任者は前任者の方針を否定し、独自の機軸を打ち出します。そのためにも、人が変わっても「真のDX」を継承し続ける仕組みが必要だと考えています。

 また、「真のDX」のためには、全社を挙げた包括的な取り組みが必要となります。一部の役員、一部の部署に閉じた取り組みではなく、全役員、全部署が主体的に動かなければなりません。これにも仕組みが必要です。

 半面、千里の道も一歩から。速いサイクルで小さい成功を積み重ねなければ、モメンタム(勢い)が失われ、DXが停滞したり頓挫したりします。2~3年で達成すべきマイルストーン(中間チェックポイント)を定義し、死に物狂いで達成し続けていかなければならないのです。

 従って、長い時間軸(横軸)、包括的なDXのテーマ(縦軸)の表の中に、速くて小さい成功とマイルスト-ンをマッピングしていくのです。まずは、自社の置かれた状況を客観視しつつ、このマップの横軸と縦軸を書いてみるのが、真のDXに向かうスタート地点です。

 DX後進国といわれている日本でも、決してまだ手遅れではないと思います。今から取り組めば、十分に遅れを取り戻せるはずです。

 次回は、包括的なDXのテーマ(縦軸)の話から始めていきたいと思います。

この記事はシリーズ「坂倉亘の「DX方法論のプレーブック」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。