東南アジア各国が次々と野心的な脱炭素の削減目標を打ち出し始めた。本連載では、その動向を探りながら日本企業が取るべき対応策を模索していく。第3回となる今回は自動車産業を中心とした製造業の動きを追う。日本の製造業と東南アジア各国との関係は深く、互いを「相棒」として共存共栄を続けてきた。だが足元では脱炭素という試練の波が押し寄せている。手を携えて乗り越えることはできるのか。結束が試される局面が訪れている。
前回記事は「東南アジアも脱炭素シフト 大手商社も対応急ぐ」
東南アジアの自動車市場は日本メーカーの牙城だ。そのシェアは8割を超え、日本車は街中にあふれている。ただ近年は中国や韓国メーカー、さらに地場企業までが日本勢によって築き上げられた城壁に取り付き始めた。武器は日本勢が比較的手薄な電気自動車(EV)だ。
タイでは中国自動車大手、上海汽車集団がタイ大手財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループをパートナーに比較的低価格のEVを投入している。同じく中国大手の長城汽車もコスト競争力が高いEVを中国から無関税で投入しており、23年にはEVを現地生産する方針も明らかにしている。地場のプレーヤーも登場しそうだ。タイ国営のタイ石油公社(PTT)は今年9月、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業とEVを生産する合弁会社を設立すると発表した。

現地報道によれば、インドネシアでは韓国の現代自動車が22年にもEVの現地生産を始める。同じく韓国のLG化学と連合を組み、ジャカルタ近郊の工場にて24年からEV向け電池セルの生産も開始する見込みだ。さらにLG化学や中国の電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)はインドネシアの国営企業4社が立ち上げた電池関連企業と協業関係にある。
現時点で東南アジアにおける電力の大部分は石炭など化石燃料によって賄われている。そのため、各国における政策主導の急激なEVシフトが、本当の意味で脱炭素といえるのか、疑問視する向きはある。ただ自動車産業が集積するタイやインドネシアはEV産業のハブになることを明確に打ち出しており、流れが逆行することは考えにくい。
現状では荒唐無稽な目標に見えたとしても、各国はEVシフトや脱炭素をアピールし続けなければならない。そうしなければ投資は見込めず、経済の大黒柱である自動車産業の生き残りもままならないからだ。
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