東南アジア各国が次々と野心的な脱炭素の削減目標を打ち出し始めた。持続可能な経済成長を目指す政府の動きに呼応し、内外の企業からの投資も相次ぐ。本連載では東南アジアの脱炭素関連の取り組みや持続可能社会を模索する動きに迫り、その動向を探りながら、日本企業が取るべき対応策を模索していく。

 連載の第1回『東南アジアで動き出す「脱炭素・ニューディール」』では、各国が脱炭素をどう捉えているのか、その思惑を分析した。今回は各国で脱炭素の実現を担う国営エネルギー会社の動向や戦略に焦点を当てる。浮かび上がるのは、現地資源を活用した地産地消型のエネルギーシステム構築に向けた動きだ。

 「今後10年以内には事業構造を転換する必要がある。できなければ我々は深刻なダメージを負うだろう」。東南アジアのある国営石油会社で新規事業の開拓を担う幹部は危機感をあらわにこう語った。

 脱炭素の波は東南アジアにも確実に訪れている。連載の第1回(『東南アジアで動き出す「脱炭素・ニューディール」』、でも触れたように、各国政府は相次ぎ野心的な脱炭素目標を掲げ、その一丁目一番地であるエネルギー分野では、石炭火力発電を縮小させる方針が発表されている。冒頭の石油会社の関係者が指摘するように、この地域でも今後10年で化石燃料から再生エネルギーや水素、バイオマス燃料などグリーンなエネルギーへの移行が進むものとみられている。

 「どこまで本気なのか」と懐疑的に見る向きもあるかもしれない。東南アジアでも持続可能性(サスティナビリティー)が重要であるとの認識は以前からあったものの、どちらかといえば経済成長の達成に重きが置かれてきたからだ。

 ただ状況は変わりつつある。各国でエネルギー供給を担う国営企業が切迫感を持って動いていることは、その証左と言えるだろう。「手をこまねいていては自社の役割や貢献場所を失ってしまいかねない」「これまでとは異なる考え方を持ち、スピード感を持って物事を進めていかないと間に合わない」。東南アジアの国営石油会社の関係者からは、こうした声が相次いでいる。

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