東南アジア各国が次々と野心的な脱炭素の削減目標を打ち出し始めた。持続可能な経済成長を目指す政府の動きに呼応し、内外の企業からの投資も相次ぐ。

 脱炭素や気候変動対策といったテーマでは欧米や中国といった主要国の動向に目が向きがちだ。しかし多くの日本企業が進出する東南アジアで起きている変化を見落としていては足元を救われかねない。

 一方で、変化に対応できれば新しい成長の機会をつかめるかもしれない。そこで本連載では、東南アジアの脱炭素関連の取り組みや持続可能社会を模索する動きに迫り、その動向を探りながら、日本企業が取るべき対応策を模索していく。

 「2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする」。今年の11月13日に閉幕した国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、タイとベトナムが排出削減の目標を先進国並みに引き上げた。新興国の多くが「実質ゼロ」にまでは踏み込めていない中、製造業の発展に注力する両国が野心的な宣言をしたことに世界の関係者は驚いた。

タイは2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げた(写真は首都バンコク近郊の製油所)(写真:Santi Sukarnjanaprai /Getty Images)
タイは2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げた(写真は首都バンコク近郊の製油所)(写真:Santi Sukarnjanaprai /Getty Images)

 インドネシアやマレーシアもCOP26に先立ち、それぞれ60年、50年までに排出を実質ゼロにする目標を発表している。約7億人の人口を抱え、日本との経済的な結びつきも深い東南アジアが脱炭素に向けて動き出した。後述するように、変化のスピードは日本企業が想定するよりも速いだろう。

© Arthur D. Little Japan
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 既に変化はあちこちで起きている。2019年には気候変動に対する懸念などから、石炭火力発電に対する反対の機運が高まった。NGO団体や各種投資家の要請を受けた結果、日本の商社が相次いで新規の石炭火力発電事業への投資を取りやめることを、自社のサステナビリティーレポートで宣言した。東南アジアで石炭火力発電所の建設機運は縮小していき、この分野に強かった日本の商社や電力業界に大きな影響を与えた。2021年には商社が石炭権益を手放すまでに方針が転換されている。

 今後は自動車業界の競争環境も変わりそうだ。ガソリン車から電気自動車(EV)への代替が起きる可能性がある。この地域で強い存在感を持つ日本の自動車メーカーの戦略にも影響が出るかもしれない。

 では各国が相次いで脱炭素で野心的な目標を打ち出したのはなぜだろうか。

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この記事はシリーズ「東南アジアにも到来「サスティナブル」の波」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。