「だから、どちらも捨てがたい」

:堤監督はシリアスな作品も作られていますが、どんな考えやテーマがあるんでしょうか。

:『人魚の眠る家』(18年)は、子どもの脳死がテーマでした。実際に脳死のお子さんがいるご家族に取材させていただいたんですが、その時握った小さな手からは、強い鼓動と体温が伝わってきて。これは「脳が死んでいる」と言われても、到底納得できないと体感した瞬間でした。そしてその体感こそが、この映画の軸であると分かったんです。

:扱うテーマが重ければ重いほど、その体感がより大切になりますよね。

:それがないと作品がただの嘘になってしまう。一番大事なのは、自分で納得できたかです。

:愛情と熱意と誠実さは、やはり何を作る上でも大切なんですね。では、実写映画、ドラマ、舞台、朗読劇…作る上での面白さや難しさは、それぞれ違うものですか?

:違います。映画は編集次第でいかようにでも作り直しができる、完全に人工的なもの。だからこそ、気持ちがしっかり入っていないといけないんです。舞台は全く逆で、開演してしまったらどうしようもないもの。やり直しのきかない舞台での緊張感や体験は、映像を作る上でもいい影響がありました。だから、どちらも捨てがたいんです。


 「映画とは賛否両論なもの」。だからこそ堤氏は、時には年の離れた高校生たちと真摯に向き合い、描く対象を必ず体感することを大切にしている。思い込みや分かったふりをするのではなく、体感するまで向き合い、納得すること。そんな堤の仕事論は、同世代ほど響くものがあるのではないだろうか。

(構成:実川瑞穂)

人気声優・梶裕貴の対談集
エンタ界との対話から見える
トップランナーの仕事術

 声優・梶裕貴が“縁”と“演”をテーマに、声優、俳優、アニメーション監督、小説家、マンガ家、芸人などエンタテインメント界のトップランナーたちと「対談」。活動の軌跡や自身の想いも込めた渾身の1冊。月刊誌『日経エンタテインメント!』の連載に加え、書籍オリジナルで声優・下野紘との対談も。
<出演者>
樋口真嗣、神木隆之介、山﨑賢人、朝井リョウ、松本花奈、林原めぐみ、新海 誠、堤 幸彦、神谷浩史、諏訪 勝、井上芳雄、藤沢文翁、又吉直樹、澤野弘之、山寺宏一、住野よる、濱田めぐみ、朴 璐美、松本まりか、板垣巴留、谷口悟朗、鈴木 央、飯塚悟志(東京03)、倉科カナ、駒木根葵汰、醍醐虎汰朗、原ゆたか、沢城みゆき、下野紘(以上、敬称略・掲載順)

職種・キャリア・年齢を超えて
「仕事への矜持」を再確認

 「アニメや声優という職業に触れる1つのきっかけになってくれればと願っています」。著者の梶は語る。加えて本書は、全く異なるジャンルや経歴を持つプロフェッショナルたちが、仕事をする上で、何と戦い何を大切にしているのか知ることができる。年齢もキャリアも離れた者同士が、仕事の矜持を語り合い、そこで得た気づき。計30人のエンタテインメント界のトップランナーの仕事術、そのエッセンスがここにある。

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