GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック=現メタ、アマゾン)元社員による告発が相次いでいる。元フェイスブック社員のフランシス・ホーゲンさんは2021年10月に米議会公聴会で証言し、子どもへの悪影響よりも収益を優先していると暴露した。本誌に対しても、アップルがSiri(シリ)を使って利用者の会話を録音していたとの証言や、フェイスブックを使った世論操作を同社が放置しているとの指摘が寄せられた。彼らはなぜ告発に踏み切ったのか。直撃した。
パリ在住のトーマス・ルボニエックさんとビデオ会議で対面したのは11月中旬のことだ。おもむろに「これを見ながらだと話しやすい」と、1枚の画像を共有された。音声を示す波形が表示され、合計1000時間分のデータであることが見て取れた。

ルボニエックさんは2019年5月からの数カ月間、アイルランドにある米アップルの施設で外注先スタッフとして働いていた。雇用の条件は「仕事内容を口外しない」「アップルの施設内で作業する」の2つ。大学院を修了したばかりの彼にとって、高賃金で最初の1カ月は住居も用意してもらえる仕事は、渡りに船だった。
仕事内容も単純だった。iPhoneやiPadなどに搭載する「Siri(シリ)」が録音した音声を聞き、AI(人工知能)が起こした文字と比較。実際と異なれば修正するだけだ。AIの性能向上のためといい、担当は母国語のフランス語。米仏語が堪能なルボニエックさんにとって、これほどお手軽な仕事はない。
ところが初日から、言いようのない不安に駆られた。「こんな仕事、いつまで続けられるだろうか……」
利用者の知らぬ間に録音
上のスクリーンショットは、このときに使っていた作業画面だ。再生ボタンを押すと音声が流れ、記載されている文言と比較。必要なら修正する。驚いたのは音声の内容だった。
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