人口急減で、マイナススパイラルに陥る危険
一方、足もとの日本の出生率は、2020年で1.34。中位推計よりも低い水準である。5年連続で低下しており、最近のコロナ禍の影響によってさらに低下するとさえいわれている。有識者の指摘通り、一億人国家シナリオの達成は、このままでは極めて難しい。実現させようとするならば、抜本的な対策をすぐにでも講じないと間に合わない。
人口急減が続くと、経済へのマイナスの負荷が需要面、供給面で働き合って、マイナスの相乗効果が表れる恐れがある。政府の委員会では、「人口が減るということは国内のマーケット規模が減ってしまうことを意味する。そうなると、国内への設備投資が減ってしまう。設備投資が減れば、イノベーションが国内では減る。生産性は上昇するよりも、減ってしまう。日本経済はマイナススパイラルに陥ってしまう危険性が非常に強い」という議論がなされている(*2)。
縮小スパイラルに陥ると、実際の国民生活の質や水準を表す1人あたりの実質消費水準が低下し、国民1人ひとりの豊かさが低下する事態を招きかねない(*3)。このような人口をめぐる厳しい現実と見通しが、筆者が『人口戦略法案』の執筆を決心するに至った背景である。
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