ミライズ――トヨタが見ている自動車の未来

 半導体と電機や素材メーカーに交じって、メンバーの中で異色の存在感を放っているのがミライズだ。この社名になじみがない方は多いだろう。実体は、トヨタ自動車とデンソーが、グループの専用チップを開発する目的で2020年4月に設立したばかりの会社である。

 実はトヨタとデンソーは、これまでにも半導体を自社で製造してきた。自動車に載る機器を動かすためのパワー半導体や、加速度センサーなど車の五感となるセンサー類である。両社は愛知県豊田市、額田郡、岩手県金ケ崎町などに自社の工場を持っている。岩手の工場は2012年に富士通から買収したものだ。

 だが、機器の頭脳にあたる高度なロジック半導体の経験はなかった。ラースへの参加は、トヨタが半導体の大口ユーザーの立場から、自分で半導体を作るメーカーの立ち位置に「下りてくる」ことを意味する。

 トヨタが東大・TSMCと一緒に何をしようとしているのかは秘中の秘だが、同社が近未来のビジネスモデルとして、「MaaS(Mobility as a Service)」を掲げていることを考えれば、容易に想像がつく。MaaSとは車のハードウエアではなく、車によって移動すること自体をサービス事業として売る考え方だ。

 例えば自動運転がある。自動車は高速で走るため、データをいちいち遠方のサーバーに送るのでは間に合わない。視覚センサーが捉える道路の状況は刻一刻と変化し、リアルタイムで地図情報と照らし合わせながら車を操作する必要がある。

 映像を人間以上の素早さで認識するにはAIがいる。ステアリング、モーター、電池などを正確に動かす機能も備えなければならない。こうした大量のデータを車の中でローカルに処理しない限り、人間なしでの運転は不可能だ。

 そのために必要となる専用のチップを作れるのは、車のすべてを知る自動車メーカーだけだろう。逆に言えば、自動車メーカーは専用チップを自分の力で開発しない限り、自動運転にたどり着けない。

自動運転を実現するために、半導体の専用チップが必要だ(写真:metamorworks/shutterstock.com)
自動運転を実現するために、半導体の専用チップが必要だ(写真:metamorworks/shutterstock.com)

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