伝統的な地政学の舞台である陸と海に加えて、デジタル情報が行き交うサイバー空間が覇権競争の場として重要性を増している。サイバー空間を支え、あらゆる製造業、サービス業に欠かせない部品が半導体だ。そのサプライチェーンを攻略すれば、敵対する国の社会を崩壊させることもできる。
今や国際情勢を左右する戦略物資となった半導体。自国や自地域の半導体産業を強くするため、米国、中国、日本、台湾、韓国、シンガポール、ドイツなどが一斉に走り出している。各国と地域が激しく争う最前線を、30年以上にわたって国際報道に携わってきた太田泰彦氏(日本経済新聞編集委員)の著書、『2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か』(日本経済新聞出版)から一部を抜粋、再編集して解説する。(写真:富士通が開発した、スーパーコンピューター「富岳」の半導体チップ「A64FX」 <提供>富士通)