米国の大企業の寿命は3分の1に縮まった

Global / Thematic Research / 24 August 2017
“Global Equity Themes Disruptive forces in Europe: A Primer”
Head of Global ESG & Thematic Research
2017年に、クレディ・スイス・グループが発表したデータによると、「S&P500種株価指数」 を構成する米国の主要上場企業の「平均寿命」は、1950年代には60年以上ありました。
ということは、当時、S&P500に選ばれるような大企業に就職できたなら、無事にリタイアの時を迎え、企業年金を手に入れることで、お金に一生困らずに済む可能性が非常に高かったわけです。それならばリスクの低い既存事業で長く働き続けるのが合理的で、成功するかどうかわからない新規事業にあえて自分から飛び込むというのは、極端な話、生涯収入という観点では必要のないリスクを取ることだったといえます。
しかし、そのような幸せな時代は米国では長く続きませんでした。
その後、S&P500を構成する企業の寿命は急激に短くなり、1980年には30年を切り、2012年には20年を割りました。たった40~50年ほどの間に、大企業の平均寿命は3分の1以下になったというのですから、その激変ぶりには驚くほかありません。生存できなくなった企業には、倒産だけでなく、買収されたり、合併されたりしたケースもありますが、いずれにせよ独り立ちできる企業でなくなったことには変わりありません。
誰が大企業を弱らせるのか?
なぜ、米国の大企業がこれほど短命になったのかといえば、技術革新のスピードが速くなったからです。破壊的イノベーションの発生頻度が高まり、大企業の既存事業をどんどんと衰退させたからです。大企業の衰退の一方で、グーグル(親会社はアルファベット)、アップル、フェイスブック(現メタ)、アマゾン、マイクロソフトといった「GAFAM」と呼ばれる企業やテスラなどが、技術革新を味方につけてイノベーションを起こし、急成長しているのがその証拠です。
大企業の寿命が縮むなかで、生き残った大企業は自らイノベーションを起こす道を模索するようになりました。その結果、エース人材をコア事業に配置する慣例も変わりつつありますし、そもそもエース人材に求められる資質も変化しています。個人レベルで見ても、会社で生き残ることを目的にするのではなく、自分の能力を向上させ、新しい時代に求められる人材になることを志向する人が増えてきました。そのために必要であれば、転職をしたり、新しい仕事に挑戦したりすることにも積極的になりました。
翻って、日本はどうでしょうか。
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