米国にも「挑戦しないほうがいい時代」があった

 日本企業では終身雇用、年功序列が保証されている時代がありました。

 一般論としていえば、かつて日本の大企業で働く個人にとっては、新規事業にチャレンジするリスクを取るより、既存事業で働くことのほうが、リスクが少ないばかりでなく、十分なリターンが一生にわたって期待できる選択肢でした。

 大企業の経営陣にとっても、自分たちの在任期間中という限られた時間で考えれば、既存コア事業を守ることのほうがリスクは少なく、安定したリターンが期待できました。だからこそエース人材や資金をコア事業に投入し、リスクの伴う破壊的イノベーションへの挑戦にはあまり本腰が入らないという状態が続いたわけです。

 これが日本企業からこの30年間、破壊的イノベーションが生まれなかった1つ目の背景事情です。

 しかし、実のところ米国も、40~50年前までは同じ状況にありました。つまり、大企業においては新しいことにチャレンジしないほうがリスクは少なく、十分な報酬の得られる選択肢であり、それゆえ多くの社員や経営陣によってチャレンジしない選択肢が選ばれていたと思います。

 なぜかというと、かつて米国の大企業の寿命は今よりもずっと長かったからです。

 次のグラフをご覧ください。

次ページ 米国の大企業の寿命は3分の1に縮まった