本連載では、「アマゾン(米アマゾン・ドット・コム)がイノベーションを起こす仕組み」すなわち「アマゾン・イノベーション・メカニズム」について記してきました。
(前回は、こちら)
今回は、なぜ私が今、このタイミングで、このようなアマゾンのメカニズムを本にまとめ、世に問いたいと思ったのかについて、少し書かせてください。
意欲だけでは、結果は出せない
まず一般論でいえば、日本の大企業は、過去の約30年間に破壊的イノベーション創出で十分な結果が出せなかったと思います。さらに次回以降にご説明する、イノベーションの大波が今来ていることを考慮すると、これからは、どんな企業においても、そしてそこで働く個人にとっても、イノベーションを創出する能力がますます重要になっていくと思います。日本企業であれ、外国の企業であれ、業種や企業規模に関係なく、イノベーション創出の能力が求められる流れが止まることはないと思っています。
もちろん、日本の技術には今も世界に誇れる優れたものがあります。小惑星探査機「はやぶさ2」の快挙からも明らかですし、業種によっては日本企業が世界をリードする製品・サービスを持つ分野もあります。これらは、イノベーション創出の能力が高くなければ実現できなかったことです。
しかしながら、日本企業の多くがイノベーション創出に意欲を持ちながらも、過去30年間、経済成長をもたらす破壊的イノベーションを起こせなかった結果が「失われた30年」でした。

たに・としゆき
東京工業大学工学部卒業後、エンジニアとしてソニー(現ソニーグループ)に入社。エレキ全盛期のソニーの「自由闊達にして愉快なる理想工場」の空気に触れながら、デジタルオーディオテープレコーダーなどの開発に携わる。米ニューヨーク大学経営大学院にて経営学修士号(MBA)取得。1992年にソニー退社後、米国西海岸でIT・エレクトロニクス関連企業のコンサルティングを手掛ける(米アーサー・ディ・リトルに在籍)。その後、米シスコシステムズにて事業開発部長など歴任。日本GE(現GEジャパン)に転じた後、執行役員、営業統括本部長、専務執行役員、事業開発本部長など歴任。2013年、アマゾンジャパン入社。エンターテイメントメディア事業本部長、アマゾンアドバタイジング・カントリーマネージャーなど歴任し、2019年退社。現在は、TRAIL INC.でマネージングディレクターを務めるほか、Day One Innovation代表としてイノベーション創出伴走コンサルタントとしても活動。
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