ソニー・盛田昭夫とベゾスの共通項
入山:前回、お話しした通り、アマゾンにはどうやらイノベーションを起こす「仕組み」がある。とはいえ、やはり社員の方々と話していると、やはり「JB(ジェフ・ベゾス)が」「JBは」というフレーズが繰り返されるのですね。つまり、「仕組み」があってもやはり、ベゾスのような強烈な「パーソナリティー」と、それが醸し出す「カルチャー」みたいなものが必要なのではないか。
これは谷さん自身がこだわる「再現性」の問題になると思うのですが。
谷:そこは私も、執筆を進めながら自問自答を繰り返したところです。「仕組み」といいながら、「ジェフ・ベゾスがいないとできない」という結論では、わざわざ本にして出版する意味がありません。
考えてみれば、成功するかどうかわからない「大胆な賭け」に出て成功したのは、ベゾス、マスクだけではありません。ベゾスが「AWS」の提案を見逃さなかったように、ソニー創業者の盛田昭夫さんも「ウォークマン」の提案を見逃しませんでした。詳細は本に書きましたが、いずれも企画が提案された時点では反対があったものの、経営者の「目利き」の力によって見いだされ、大ヒットにつながったケースです。
そう考えると、優秀な創業者には、何か共通する思考回路のようなものがあって、そこを分解していけば、普通の人にも再現可能な形にして提示できるのではないか。そんな思いで書き進めました。
だからといって、普通の人が初めから、「AWS」や「ウォークマン」のような大成功を収められるかといえば、そんなことはないでしょう。けれど、原理原則を知ったうえで、小さな事例で練習を繰り返していけば、だんだんと大きなものにも賭けられるようになっていく。そのようなトレーニングは可能ではないかと思います。
入山:なるほど。おそらくベゾスの後継者のアンディー・ジャシーは、もしかしたらそういうトレーニングを積んできたのかもしれない。
谷:そうですね。アンディーはベゾスの側近で、その言動を長く間近に見てきましたから。
入山:そうなると、やはり「人を育てる」という話に戻っていく。
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