GAFA4社で日本企業と最も相性のいい仕組みを持つのがアマゾン(米アマゾン・ドット・コム)。日本企業が学ぶ価値は高い――。早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏は、こう指摘する。
アマゾンが組織的に連続してイノベーションを起こす仕組みを体系化した書籍『Amazon Mechanism(アマゾン・メカニズム)』に推薦の辞を寄せた入山氏と著者の谷敏行氏の対談を、今回から前後編でお届けする。
日本企業が学ぶべき企業がなぜ、グーグルでもフェイスブックでもアップルでもなく、アマゾンなのか? ソニー(現ソニーグループ)の技術者出身で、アマゾンジャパンや米シスコシステムズ、日本GE(現GEジャパン)などで幹部を務めた谷氏との意見交換を通じて、明らかにしていく。(構成/小野田鶴)
谷敏行氏(以下、谷):入山先生には拙著の草稿をお読みいただき、推薦の言葉に加えて、編集上の助言なども頂戴しました。ありがとうございました。
入山章栄氏(以下、入山):僕は純粋に、この本には価値があると思ったのですよ。
僕自身、アマゾンジャパンの社員の方たちと結構、お付き合いがあって、教え子が働いていたりもします。それで、アマゾンという会社(米アマゾン・ドット・コム)にはどうやら、「イノベーションを生み出す仕組み」というのがあるらしい、ということはかねてから知っていました。例えば、谷さんが著書のなかで紹介されている、ユニークな企画書のフォーマット(PR/FAQ、詳しくは、本連載の第3回参照)といったものなどですね。
イノベーションというと、どうしても「属人的」になりがちですが、アマゾンではどうやら、それを「仕組み」にしている。少なくとも社員たちは、「うちの会社では仕組みになっている」と信じてやっている。それは、すごいことだと思っていました。
だから、そんなアマゾンの「イノベーションを起こす仕組み」を体系的に解説する本というのが、日本語で初めて出版されるというのは、意義深いと思いました。今、日本企業の経営者や新規事業担当者にはイノベーションをどうやって起こすかに悩んでいる人が多く、そういう方たちにはぜひ読んでほしいですね。
谷:アマゾンにかぎらず、米国企業は仕組みをつくるのがすごくうまい。
入山:同感です。

早稲田大学大学院、早稲田大学ビジネススクール教授
慶応義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で、主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール、アシスタントプロフェッサー。13年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。19年より現職。「Strategic Management Journal」「Journal of International Business Studies」など国際的な主要経営学術誌に論文を多数発表。主な著書は『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)、『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)(写真:的野弘路)

東京工業大学工学部卒業後、エンジニアとしてソニー(現ソニーグループ)に入社。エレキ全盛期のソニーの「自由闊達にして愉快なる理想工場」の空気に触れながら、デジタルオーディオテープレコーダーなどの開発に携わる。米ニューヨーク大学経営大学院にて経営学修士号(MBA)取得。1992年にソニー退社後、米国西海岸でIT・エレクトロニクス関連企業のコンサルティングを手掛ける(米アーサー・D・リトルに在籍)。その後、米シスコシステムズにて事業開発部長など歴任。日本GE(現GEジャパン)に転じた後、執行役員、営業統括本部長、専務執行役員、事業開発本部長など歴任。2013年、アマゾンジャパン入社。エンターテイメントメディア事業本部長、アマゾンアドバタイジング・カントリーマネージャーなど歴任し、2019年退社。現在は、TRAIL INC.でマネージングディレクターを務めるほか、Day One Innovation代表としてイノベーション創出伴走コンサルタントとしても活動。
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