会社にとってのリスクと、担当者個人のリスク

 ベゾスが指摘するように、破壊的イノベーションを生み出すことが、「10%の確率で100倍のリターンが得られる」という賭けだと考えたとき、大企業であれば、会社として賭けに出られる回数は比較的多いと思います。その結果、規模の大きい成功が1つ出れば、そのほかの多くの失敗の損失を埋める以上のリターンを得ることができます。

 しかし、失敗に終わったプロジェクトを担っていた個人としては、どうでしょう。1人の人が一度に担当できるプロジェクトの数は限られています。会社と違って、「賭けに出る回数を増やして、どれかが成功すればいい」というスタンスは取りにくいはずです。特にアマゾンの場合、新規事業の責任者は、他の事業と兼任しないことを原則としています。ゆえに、担当者個人が負うリスクはなおさら大きくなります。

 となると、会社としてはリスクをリターンが上回って万々歳でも、失敗したプロジェクトを担当した多くの個人は浮かばれず、次のチャンスすらもらえないということになりかねません。

 アマゾンには、この問題を回避する仕組みがあります。それは、イノベーションに挑むプロジェクトのリーダーやメンバーを、そのプロジェクトの「結果」によって、マイナス評価を受けないようにする仕組みです。

アマゾンの人事評価は「インプット」重視

 イノベーションに挑むプロジェクトメンバーの評価は、「結果の成否」ではなく、プロジェクトを進める「プロセスにおける貢献」、すなわち「どのようにプロジェクトを進めたか」に重きを置かれています。

 アマゾンの人事評価では「アウトプット」と「インプット」を分けて考えます。「アウトプット」とは、担当した事業から生み出される売り上げや利益、キャッシュフローなどの結果を指します。それに対して「インプット」とは、アウトプットを生み出すために準備したさまざまなリソースです。例えば、電子商取引(EC)ビジネスを担当する社員ならば、「ラインナップの商品数、価格、調達量」だとか「制作した商品ページ」などが、インプットに当たります。

 そして、私たちがコントロールできるのはインプットであり、アウトプットとは結果にすぎない、というのがアマゾンの基本的な考え方です。従って、日々チェックし、改善の対象とするのは、インプットの指標であり、人事評価の基準となるのも、主にインプットへの貢献度です。

 人事評価において、アウトプットよりインプットを重視するというのは、既存業務のオペレーションだけでなく、イノベーションに挑むプロジェクトでも貫かれる原則です。

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