アマゾン(米アマゾン・ドット・コム)という会社の本当の凄(すご)みは、「小売業の破壊力」ではなく「連続起業力」にある。すなわち、「組織的にイノベーションを起こし続ける仕組みを持っていること」に、アマゾンの強さがあるということを、お伝えしてきました。詳細は拙著をご参照いただければと思いますが、本連載ではそのエッセンスをご紹介しています。

 連載の第1回で、アマゾンが築き上げた「イノベーション量産の方程式」の全体像をお示ししました。そして、アマゾンがいかにして、社内に【ベンチャー起業家の環境】をつくり、「普通の社員」を「起業家集団」に変えているかを、第2回第3回で、ご紹介しました。

 今回は、【大企業の落とし穴】と、その回避策を取り上げたいと思います。ただし、今回、ご紹介する「落とし穴」は、大企業に限らず、中小・中堅企業でも頻繁に起きていることであり、アマゾンが用意している「落とし穴を回避する仕組み」は、すべての企業にとって示唆があると思います。

 まず、企業が成長するに伴い、新規事業が立ち上がりにくくなる6つの理由と、それぞれの問題についてアマゾンが、どのような仕組みやプラクティス(習慣行動)で対処しているか、全体像を再掲します。

 新規事業のリーダーが既存事業と兼務で、社内調整に追われる。既存事業が優先され、新規事業にリソースが回されない。聖域化した「過去のコア事業」の幹部が権力を持つ……。このような問題に直面した経験のある方は、少なくないと思います。

 今回は、「新規事業の失敗が担当者の『失点』になる」という問題に焦点を当てます。人事評価の仕組みや考え方が関わるところです。

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