「ユーザーの感想」を、最初に考える

 アマゾンでは、イノベーションを創出するための思考プロセスを「ワーキング・バックワード(Working backwards)」と呼びます。日本語にすれば「逆方向に思考する」といったところですが、具体的には「顧客ニーズからスタートしてそのソリューションとなる製品・ サービスを発案する」ということです。もっとわかりやすい言葉で説明すれば、「プロダクトアウト」ではなく、「マーケットイン」でやろう、ということです。その中核を担うツールが「PR/FAQ」です。

 では、PR/FAQに具体的にどのような要素が盛り込まれるかというと、主に次の3点です。

  • どのようなサービス・製品が市場導入されるのか?
  • 使用する人にとってどんな利点があるのか?
  • 実際使ってみた人のフィードバックはどうか?

 特に、使用する人のフィードバックを想像して書くというのは、意義深い試みです。この試みを通じて、発案者は、サービス・製品を作る側の意図を離れ、顧客にとってどんなメリットがあり、どれくらいそれを喜んで受け入れてくれるのかということを具体的な形で想像する機会を得ます。つまり、自分が使う側の視点に立たないと書けませんし、書いていくことによって本当に顧客にとってメリットがあるのか、またあるとすればそれは何なのかがはっきり見えてきます。

企画書を「書いて終わり」にしない

 さらに重要なポイントは、PR/FAQは書いて終わりではなく、そこからがスタートである、ということです。提案者がPR/FAQを書き上げると、関係者でレビューします。そこで例えば、「長期的に見て、本当に顧客はこのサービス・製品を必要とするのか?」「もっといいアイデアはないのか?」「サービス内容や製品スペックをこう変更したほうがよくないか?」といったことを議論します。この議論の過程においてPR/FAQを改善し、完成度を高めていきます。

 このように、優れたPR/FAQを書いて議論していくには、チーム全体が徹底して顧客の視点に立ち、起業家の視点を持たなくてはなりません。私も何度も書くなかで、チーム全員の視点がより顧客中心になるのを体感しました。

 PR/FAQは、企画提案者と関係者の視点を、おのずと顧客に近付けていくツールです。この仕組みによってアマゾンで働く人々はおのずと「ワーキング・バックワード」へ、すなわち「顧客ニーズからスタートして発案する」という思考習慣へと導かれていきます。

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