「3~5年後」の未来予測は「10年後」より難しい

 もっと具体的に説明しましょう。

 まず、ある分野において、自分たちが、今から新製品・新サービスの開発を始めたとして「3~5年後」にはどの程度のレベルの機能を持ったものが実現できるかを見通します。さらに、そこまでに推測されるコストから、顧客に提供できる価格を想定します。次いで、その価格と機能の組み合わせでどれくらいの数の顧客がそれを購入するかを予測します。これによりビジネスとして成り立つのかを高い確率で予測できる、というのがこの能力です。

 驚くべきことにインタビューしたシリアルアントレプレナー全員が、こう口をそろえました。

 「技術力だけを取り出せば、自分より優秀な技術者はほかにたくさんいる。しかし、技術開発によって実現する新製品・新サービスのレベルと、顧客ニーズが交差するポイントを予測する能力においては、ほかの人に負けないという自信がある」

 ここで重要なのは「3~5年後」という時間軸です。

 優秀な技術者であれば、技術のトレンドと進化のスピードを深く理解し、「10年後」に何が実現されているかを高い確率で予測できるかもしれません。しかし、起業してビジネスとして成功させるには、その粒度の予測では不十分です。

 例えば、本稿をまとめている2021年12月の段階で、「今から10年後にドローンカーが東京で空を飛んでいるか?」と質問されたとして、「かなり高い確率で実現しているだろう」と答えることは、私にもできます。ただしそれがある特定の2地点を結ぶだけなのか? 東京全域をカバーするものか? 特別なライセンスを持った人だけが運航するのか? 自動運転なのか? コストがどれくらいでターゲッ トとする顧客の属性は?……といった具体的な製品・サービスの内容を予測することまでは、私にはできません。

 つまり、このときの「10年後の予測」とは「方向性」に過ぎません。精緻な製品やサービスとしての形を伴わない、ある種のファンタジーのようなものです。

 新しい技術が生まれたとき、それを社会実装した具体的な製品やサービスを企画するならば、「3年後はどうか?」「5年後ならどうか?」を考える必要があります。

 このように質問の時間軸を「10年」から「3~5年」に変えた途端、 回答の難易度は一気に上がります。予測すべき未来が近くなることで、さまざまな要素をより精緻に見積もらなければ、答えが出せなくなるからです。

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