イノベーションが失われたのは、資金不足のせいなのか?

 日本から生まれるイノベーションが減った理由を、バブル期には潤沢に供給されていた研究開発資金が減ったから、と考える人も多いと思います。もちろんそれも大切な一要素だと思いますが、それは根本原因ではないと私は考えています。バブル崩壊直後には、ソニーもまだ研究開発費を削減するとか、社員数を減らすといった事態には及んでいませんでしたし、そもそもバブル崩壊の少し前から、破壊的イノベーションの種やアイデアを見つけるのに苦労しはじめていた感覚がありました。

 当時は、それが「なぜなのか」ということに対して、ジュニアな技術者であった私には解も仮説も見つかりませんでした。しかし、「何か別の理由があるのではないか」という感覚だけは残りました。

 この疑問に答えを出す、大きな手がかりを得たのは、1998年のことでした。

バブル崩壊後、ソニー技術者だった著者は「なぜイノベーションが失われたのか」という疑問を抱き、技術者からコンサルタントに転じた(写真:Haruyoshi Yamaguchi/アフロ)
バブル崩壊後、ソニー技術者だった著者は「なぜイノベーションが失われたのか」という疑問を抱き、技術者からコンサルタントに転じた(写真:Haruyoshi Yamaguchi/アフロ)

「1998年のシリコンバレー」で得た学び

 1992年にソニーを退社した私は当時、コンサルタントとして米国シリコンバレーのパロアルトに赴任したばかりでした。

 この頃に出会った人たちから学んだことが私の頭になかったら、 後年、アマゾンが運用しているイノベーションを起こすためのツールを見たときに、それらが簡易に見えて、実はどれほど実践的かつ効果的に組み上げられているか、その真の威力を見出すことはできなかったはずです。だから、読者の皆さんにも、ぜひ知っていただきたいと思うのです。

 私は当時、イノベーションを創出するメカニズムのヒントを得るために、ベンチャーの起業で成功する人たちの能力はどんなところが優れているのかを調査していました。

 そこで、その極端な事例として注目したのが、シリアルアントレプレナーです。起業して一度、上場に成功するだけでも偉業ですが、 それを何度も連続してやり遂げている一握りの起業家のことです。

 かつては、創業したベンチャー企業を上場(IPO)することをもって「成功」と考えられていましたが、近年では上場する前に大企業から高いバリュエーション(企業価値の評価)を得て買収されるというエグジット(出口)も、「成功」として数えられるようになってきました。上場・売却いずれにしても、起業家としての「成功」を連発するのがシリアルアントレプレナーと呼ばれる人たちです。

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