しかし、アマゾンは、書籍から始まった電子商取引(EC)事業の商品アイテムを単純に増やすだけでなく、数々のイノベーションを起こしています。

 代表例は、2006年に開始した「アマゾン・ウェブ・サービス (AWS)」と呼ばれるクラウド事業でしょう。現在、アマゾンの営業利益の約60%を稼ぎ出すまでに成長しています(※1)。これなどは、 EC事業を単純に延長しただけでは生まれない、「破壊的イノベーション」と呼ぶにふさわしい新規事業でした。

※1.「amazon annual report 2020」に基づいて計算すると、2019年は63.3%、2020年は59.1%。 2020年に比重が下がっているのは、コロナ禍でEC部門が好調だったためにAWS部門の比率が相対的に下がったものと見られる

 アマゾンが生み出してきた、イノベーティブな新規事業は、ほかにも多くあります。主なものを、年表にして示します。

アマゾン「イノベーション年表」

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 AWSのほかにも、仮想商店街「アマゾン・マーケットプレイス」 の出店者に対し、在庫管理や決済、配送などのインフラを提供する 「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」、音声認識の人工知能 「アレクサ」、電子書籍のサービスとリーダー「キンドル」など、アマゾンが不連続な分野で破壊的なイノベーションを次々に起こしてきたことが、この年表からおわかりいただけると思います。アマゾンの本当の凄(すご)みとは、組織として「連続起業」に成功していること、いわば「超・シリアルアントレプレナー企業」であることだと私は考えます。

アマゾンの事業成長には「仕組み」がある

 アマゾンの経営について書かれた本は、すでに数多く書店に並んでいて、それらを読めば、ときにユニークなアマゾンでのさまざまな仕事のやり方を知ることはできます。ただし、それぞれがどのように影響し合い、全体として事業成長を可能にしているのかというメカニズムについての学びを得るのは難しいでしょう。

 すでにアマゾンは、誰か1人の天才ーすでに引退した創業者 ジェフ・ベゾスのような―がすべてに目を配り、指示できる規模ではありません。にもかかわらず、さまざまな分野で、しかも破壊的なイノベーションが起きているとすれば、それを突き動かしているのは誰かのひらめきやセンスではなく、そこには再現可能な「仕組み」があるはずです。

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