実は、デジタル化で先行していた日本

 アナログの信号で記録・再生されていたレコードや磁気テープが、デジタルの信号で記録・再生されるコンパクトディスクやミニディスクに置き換わっていきました。今では静止画像であれ動画であれ、音声であれ、デジタルデータ以外で記録されたものを見つけるほうが難しいですが、このような「アナログからデジタルへの移行」というのは1980年代から始まり、当時、世界でその流れをリードしていたのは明らかに、ソニーをはじめとする日本企業でした。

 しかし、当時、強みとしていたデジタル技術を活用して、インターネットとコンピューターのイノベーション・プラットフォームの波に乗ることにおいて、日本企業は米国のスタートアップなどに完全に後れを取りました。音楽のストリーム配信やユーチューブ、ネットフリックス、アマゾンの電子書籍などの興隆を見れば、誰の目にも明らかなことです。

 私も記録信号のデジタル化で日本が世界をリードしていた時代の技術者の1人でした。当時はイノベーション・プラットフォームの波のことなど知る由もありませんでしたが、デジタル化が一段落ついたとき、次に何を自分の開発テーマにすべきか決めきれず、焦っていた記憶があります。結局、2年間くらい考えても自分の力を10年単位で注ぎ込みたいと思えるテーマを見つけられず、技術者としてのキャリアを終えることを決断したのはそのタイミングでした。

 今振り返ると、そのとき、すでにコンピューター、インターネットの波が来ていました。そんなときに自分はハードウエアの技術にこだわった狭い視野で考えていたために行きづまったのだなと、今になってみれば納得がいきます。

 そういう変革の時期において、当時のソニーの経営トップはどのように考えていたのか。昨年、『Amazon Mechanism』を書き進めながら、あらためて興味を持ちました。そして、1992年1月に「パラダイム」というテーマで開かれた社内の「マネジメント会同」で、井深大氏が2400人の幹部の前で話をされたことを思い出しました。次回は、このときの井深氏の発言から、コンピューターとインターネットがもたらした大波の本質を探りたいと思います。

アマゾンの事業成長のメカニズムを初めて体系化した1冊。

「GAFA4社で
日本企業と最も相性のいい
仕組みを持つのがアマゾン。
その全容を体系化した意義ある1冊」
―― 早稲田大学ビジネススクール教授・入山章栄氏 推薦

アマゾンには、画期的な新規事業を
組織的に連続して起こす
「イノベーション量産の仕組み」があります。

◆ アマゾンのイノベーション量産の方程式

【ベンチャー起業家の環境】
 ×【大企業のスケール】
  -【大企業の落とし穴】
   =【最高のイノベーション創出環境】

【ベンチャー起業家の環境】とは、
「普通の社員」を「起業家集団」に変える仕組みです。
そこに【大企業のスケール】を与えることで、
起業家よりも恵まれた環境に社員を置き、そこから、
【大企業の落とし穴】をマイナスすることで、
【最高のイノベーション創出環境】が完成します。

本書では、この方程式を実現するための
「アマゾン・イノベーション・メカニズム」を
24個の「仕組み・プラクティス」に分解して解説します。

この記事はシリーズ「新規事業はアマゾンに学べ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。