CFOにまず求められるのは「チームづくり」

 私はIPOのアドバイザーとして何人ものCFOと一緒に仕事をしてきました。バックグラウンドは人それぞれです。私のような投資銀行の出身者もいれば、コンサルティングファームの出身者や、公認会計士、経理財務からのたたき上げの人もいます。

 CFOの経歴は様々ですが、経験上、大きく2つのタイプがいると感じています。未来を創るための判断をすることが得意な人と、過去の数値や事実を固めていくことが得意な人です。

 CFOというと一般的には財務諸表を取りまとめる責任者であり、最近では資金調達の責任者というイメージが強いと思いますが、企業の規模や業態、成長のステージなどによって求められるスキルやノウハウは異なります。一定レベルのファイナンスの知識は必要ですが、どのステージの企業であっても、また、どちらのタイプのCFOであっても、知識以上にチームをつくりあげる経営者としての能力が重要だと私は考えます。

 CFOは広範かつ専門的な業務を任されたり、事業部との調整役を担ったりすることが少なくありません。例えば、法律にも詳しくなる必要があります。決算を開示する際にも、有価証券報告書に正しい数字を記載するために、関連する法制度を知っておく必要がありますし、実際にCFOが法務を管轄しているケースも多く見られます。

 「CxO」と呼ばれる役職に共通していることですが、当然ながらすべてにたけている人はいないので、自分が得意としない領域をカバーするためのチームづくりが必要となってくるわけです。

 逆説的に言えば、どういうバックグラウンドを持っている人でもチームをつくることができればCFOを務めることができます。自分の知識や経験だけに頼っていては、いずれ壁にぶち当たります。チームを組成し、その力を活用することで直面するであろう課題を乗り切る能力が求められているのです。

 先ほど2タイプのCFO像を挙げましたが、私の理想は未来を創るCFOです。具体的には「どのタイミングで、どこに、いくら投資をするのか」を判断し、企業の成長を加速させられる人です。そのためには、成長に備えて資金を調達し、常にアンテナを高く張り巡らせ、正しい投資判断を下すことが重要になります。

 もう一つ大事なことは、不測の事態に適切に対応することです。様々な情報をインプットして予測することはもちろん重要ですが、新型コロナウイルスのように予測できない不測の事態が起きることもあります。予期せぬ事態にどう備えるのか、そしていざ起きたときにどう迅速に対応するのかも未来を創るCFOが担う重要な役割です。

 そのために必要なスキルは、優先順位を決めて危機に対応するリスクマネジメント能力と、経営状態が悪化したときに金融機関や投資家から支援を取り付けられる関係性の構築能力です。

 未来を創るというと「攻め」のイメージが先行しがちですが、本来、「守り」がきちんとできていないと攻めることはできません。アクセルとブレーキのどちらの役割も担い、タイミングを見ながらハンドリングできる状況をつくっておくことこそが真の未来を創るCFOのミッションだと私は考えています。

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