市場環境の悪化を受けて、昨年までと比較して企業価値が急激に下がっている企業が少なくありません。前回はその荒波の中にいる上場企業のCFO(最高財務責任者)として考えていることをテーマに取り上げました。今回は未上場企業を想定して、成長の伸びしろが大きいスタートアップのCFOが今、すべきことを考えてみたいと思います。

(写真:的野弘路)
(写真:的野弘路)

上場タイミングを引き伸ばすリスク

 私は現在、上場企業のCFOですが、社外取締役に就任している企業はもちろん、その他のスタートアップ企業からもファイナンスや経営全般の相談が舞い込み、日々多くの未上場企業の経営陣とコミュニケーションを取る機会があります。

 最近は特にIPO(新規株式公開)のタイミングについて相談を受けることが増えました。市場環境が不安定な昨今、IPOのタイミングとしてはふさわしくないのではないか、IPOの予定時期を遅らせた方がよいのではないか、という内容が大半です。

 リスクマネーを調達している企業は、M&A(合併・買収)か、自ら上場するか、どちらかのエグジット(出口戦略=この場合はリスクマネー供給者の利益確定のための手段)を用意する使命があります。上場を目指す会社にとっても、投資家にとっても上場タイミングが重要なことは言うまでもありません。

 私は市場環境が芳しくないことだけを理由に、安易に上場の目標時期を遅らせることには反対です。

 例えば、目標時期を1年間先送りにするということは、来年には市場環境が改善していることが前提になっているからです。実際には今より環境が悪くなっている可能性もあり得るわけですから、1/2の確率の「賭け」をすることと同じです。

 市場の先行きを完全に見通すことは誰にもできません。先延ばしにしようと思った時に、何の根拠もなく、来年の方が状況は良くなっていると思い込もうとしてはいないでしょうか。IPOの予定時期を遅らせることは、誰もコントロールできないマーケットリスクを取ることだと理解して判断しなければなりません。

 前回、フェアバリューは相対評価のウエートが高いというお話をしました。実際、業績を2倍にするには大変な自助努力が必要ですが、市場環境がよければマルチプル(株価倍率)が高くなり、業績がそこまで成長しなくても時価総額が2倍になることもあります。確かに環境の変化に期待したい気持ちも理解できます。ただ、逆に環境次第ではマルチプルが下がり、2分の1の価値になることも起こり得るわけです。時価総額とはそういった不確かなものです。

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