CEOにも進言、時にはぶつかる覚悟も

 キャッシュフローのコントロールは、前回お話しした上場企業のCFOと同じく必要です。よりシビアに取り組まなければディフェンスラインを守りきれません。リスクオフの場面では生き残るための体力が温存できていることが企業への評価につながることが多いです。

 マーケットや投資家とのコミュニケーションになじみがないCEO(最高経営責任者)は、どんな状況にあっても事業の拡大にだけ目を向け、積極的な投資を進めることもあるでしょう。CEOに進言し、その認識のギャップを埋めることができるのはCFOだけです。

 ここで重要なのは外部の声に耳を傾けたうえでCFOが「経営者」として判断し、CEOとぶつかることです。投資家や外部アドバイザーの意見を右から左に伝える伝言ゲームをしているだけでは本当のCFOとは言えません。

回復局面に備える

 キャッシュフローコントロールの話に付け加えるとすれば、コストの見直しの際に成長局面でジャンプできる準備も同時に進めていくべきだということです。

 例えば、苦しい状況でも次の成長に必要な布陣を維持できるかどうかは重要なポイントです。安易にリストラや人員配置などで体制を大きく転換してしまっては、潮目が変わった際、キャッチアップできなくなります。

 厳しい状況下で体力の温存と投資の両立は難しいですが、ここでCFOが組み合わせるパズルのピースが、今後の企業の命運を握っているのです。

 回復期に備えるという話はスタートアップエコシステム全体にとっても重要なポイントです。リーマン・ショック後には、ベンチャーキャピタルによるリスクマネーの供給や投資銀行のIPO支援部隊の編成を含む多くのスタートアップ支援が縮小されました。

 盛り上がっている時に気前よく支援し、冷え込んだ時に撤退していたのでは、回復期の成長を十分に後押しすることはできません。スタートアップだけでなく、支援する側も一度手を引いてしまってから再び体制を整えるには時間がかかってしまいます。実際、リーマン・ショック後もスタートアップ支援の手を緩めなかったプレーヤーが、人的ネットワークやノウハウを蓄積することで、後に相応のポジションを確立しました。歴史も継続して支援を行うことの重要性を立証していることは周知の事実かと思います。

 ビジネスに新たな風を吹き込むスタートアップは必ずどの時代にも存在します。外部環境に左右されることなく継続してスタートアップを支援できるよう、腰を据えたエコシステムを創ることが日本の産業を発展させるためにも必要なのではないでしょうか。

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