このような市場環境だからこそフェアバリューを意識する
時価総額がフェアバリュー(適正価格)を下回っている場合には、投資家との対話にも目を向けていく必要があります。
特に好調なマーケット下においては成長さえしていれば許容されていた不確定要素が大きい積極的な先行投資や赤字の事業がある場合、リスクオフ(回避)の環境ではより丁寧な説明が必要です。投資を継続する場合には、投資に耐えうるキャッシュや資金調達力があることはもちろん、想定通りのROIが期待できるという理解を得られない限り、企業側が考えるフェアバリューは獲得できません。
同時にコストの考え方や黒字化のタイミング、時には撤退基準やバックアッププランに至るまで、楽観的ではないシミュレーションと万が一への準備ができているという納得感も合わせて得られることで、ようやくフェアバリューの獲得に近づくことができるのです。
今回、上場して間もない多くの成長銘柄の時価総額が下がっているのは、銘柄属性として株価のボラティリティー(変動率)が高い、相対比較でバリュエーション(株価指標)が高かったなど様々な要因があると思います。ただ、上記について投資家が納得できる水準で説明しきれなかったケースもあると思います。ターゲットとする市場の拡大とともに売上高成長が継続し、数年先の回収フェーズで利益が捻出できるという計画に対して、成長性に陰りが見えている中で、計画の妥当性についても懐疑的な状態では、わざわざトラックレコード(運用実績)の少ない企業に投資するモチベーションはなくなってしまうでしょう。
株価を構成する要素は、将来への成長期待が大きいものの、投資家への説明と会社の実績に対する評価も一定程度含まれています。過去に投資家への説明に反して大きくコストを投下して赤字を拡大した企業などは、マーケットが冷えてきたときに、真っ先に投資が避けられる傾向にあります。普段から投資家への説明には責任を伴うことを念頭に置いておかねばなりません。
ちなみに、投資家との対話の大前提として、今多くの企業はフェアバリューそのものが下がっていることを認識しなければなりません。フェアバリューは相対評価のウエートが高いからです。自社の業績が2倍になっても、マーケットの評価基準が半分になれば株価は上がりません。あまりにも投資家とフェアバリューの目線が乖離している場合にも、市況や自社の見通しの分析が不十分だと敬遠されてしまうことになります。
CFOはフェアバリューをしっかりと見定め、どんな市況であっても、割高であれば売り、割安であれば買う投資の原理原則を理解している投資家を引きつけ続けることが必要なのです。
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