日本のスタートアップのアクセルをどう踏み込ませるのかも大事ですね。チャレンジに対する理解を深め、正しく認識することで、ファイナンスの知見も生きてきます。
石井氏:アクセルの踏み方は色々あります。仲間をつくって応援団を形成して、対話しながら踏み出してほしいですね。スタートアップは独自の世界観になりがちですが、大きく成長するには幅広い議論が必要です。
成功しているスタートアップは未上場でも株主などのステークホルダー(利害関係者)との対話を大切にしていますね。
石井氏:応援団は不可欠です。そのためには建設的な対話が最も大切です。対話によってかえってしがらみができることがあるかもしれません。ただ、それを含めて突破できないと成長はできません。
日本の規制も同じです。窮屈に見える規制にもその立場での正義があります。その規制を突破したときのインパクトを数字に落とし、会話を通して解を見せることで初めて規制を突破することが可能になります。そうした活動にスタートアップと一緒に取り組んでいきます。
今回の委員同士でも正義の定義は異なりました。そのアップデートも含めて今後ともよろしくお願いします。
インタビューを終えて
視線を海外に向けると、多くのIT企業が勃興し、信じられないスピードで急成長を遂げています。日本にも有力なスタートアップは数多くあるものの、成長スピードや規模感は大きく見劣りします。「敗因」の1つといえるのがファイナンスなのではないでしょうか。
かつて証券会社でスタートアップのIPO支援に従事し、今は上場企業でCFOとしてファイナンスをつかさどる立場にある私は、違う角度から起業家の支援の必要性を感じてきました。
ブラックボックスになりがちだった上場準備プロセスについて、多様な情報にアクセスできる環境が整いつつあることや、議論が活発になっていることは、スタートアップ・エコシステムにとってよい影響があると同時に、発信する側も受け取る側も情報の取捨選択能力がより一層求められていることに気を付けるべきなのではないでしょうか。ステークホルダーにおいても、各プレーヤーによって情報発信のしやすさが大きく異なること、限定的なケースのみを取り上げている場合があることに課題感を持っていました。
「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」は、官・民、そして事業会社・投資銀行・投資家それぞれが立場を超えて、スタートアップファイナンスの発展というゴールに向けて議論を重ねました。変化の激しい株式市場に合わせて今後もアップデートし続けることは必要ですが、客観性を担保しつつ必要な情報が網羅されたガイダンスになっています。
時には利益相反にもなる立場の関係者ではあります。ただ、スタートアップをより大きく成長させたいという思いは同じです。利害の枠や立場を超えて1つの目標に向かいガイダンスを示せた意味は、特に大きいのではないでしょうか。日の丸スタートアップのファイナンスの成功と成長を後押しする存在になると私は信じています。
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この記事はシリーズ「鈴木秀和の「未来を創るCFO」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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